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謝金の消費税とインボイス制度への対応方法は?


2024.05.01

謝金を支払う際、消費税の取り扱いについて悩むことがあるでしょう。

この記事では、謝金に消費税がかかるのかどうか、また、インボイス制度開始後はどのように対応すればよいのかについて詳しく解説します。謝金の消費税について正しく理解し、適切に処理できるようにしましょう。

謝金とは何か

謝金は、講演会やイベントなどで役務提供を受けた際に支払われる「お礼」の意味合いが強い金銭のことです。一方、報酬は役務提供に対する対価としての性質が強くあります。ここでは、謝金の意味や目的、報酬との違いについて詳しく見ていきましょう。

謝金の意味と目的

謝金とは、前述した通り、役務の提供を受けた際に支払われるお礼の意味合いが強い金銭のことを指します。謝金を支払う目的は、役務提供者に対して感謝の気持ちを伝えることにあります。つまり、謝金は金銭的な対価というよりも、協力へのお礼として渡されるものといえるでしょう。

謝金と報酬の違い

謝金と報酬は似ていますが、いくつかの違いがあります。報酬は、役務提供に対する対価としての意味合いが強く、労働の対価として支払われるものです。

一方、謝金は感謝の気持ちを込めて渡されるもので、必ずしも役務提供の対価とは限りません。ただし、実態が報酬と同じである場合は、たとえ謝金という名目で支払われたとしても、税務上は報酬として扱われます。

つまり、呼び方が謝金でも報酬と同じ扱いになることがあるのです。

謝金に消費税はかかるのか

謝金に消費税がかかるかどうかは、役務提供の対価性があるかどうかによって判断されます。つまり、謝金の実態が役務提供に対する報酬と同じである場合は、消費税の課税対象となります。

ここでは、国内外での役務提供に対する謝金の消費税について詳しく見ていきましょう。

国内での役務提供に対する謝金

原則として、国内での役務提供に対する謝金には消費税がかかります。講演会の講師に支払う謝金や、イベントの出演者に支払う謝金などが該当します。これらの謝金は、役務提供に対する対価としての性質が強いため、消費税の課税対象となるのです。

海外での役務提供に対する謝金

海外での役務提供に対する謝金は、原則として消費税がかかりません。これは、消費税が国内税であり、国外での取引には課税されないためです。ただし、海外で提供された役務が国内で消費される場合は、消費税の課税対象となります。

つまり、海外の講師を日本に招いて講演会を開催し、謝金を支払う場合などは、消費税の課税対象となるのです。

免税事業者への謝金支払い

免税事業者に謝金を支払う際は、消費税の取り扱いに注意が必要です。ここでは、免税事業者に支払う謝金の取り扱いと、インボイス制度開始後の適格請求書の入手について詳しく見ていきましょう。

免税事業者に支払う謝金の取り扱い

免税事業者に謝金を支払う場合でも、支払う側は消費税を加算して支払う必要があります。これは、謝金が役務提供の対価であり、課税仕入れに該当するためです。

受け取る側の免税事業者は、受け取った消費税を納税する義務はありませんが、支払う側は仕入税額控除ができません。つまり、免税事業者への謝金支払いは、支払う側にとってコストアップにつながる可能性があるでしょう。

免税事業者からの適格請求書の入手

2023年10月1日から導入されているインボイス制度では、免税事業者からの仕入れについても、適格請求書の保存が必要になります。適格請求書とは、登録番号や適用税率などの必要事項が記載された請求書や領収書などを指します。免税事業者に謝金を支払う際は、適格請求書を入手するように依頼しましょう。

ただし、免税事業者が適格請求書発行事業者として登録していない場合は、適格請求書を発行できません。その場合、支払う側は仕入税額控除ができないため、経過措置を利用するなどの対応が必要です。

インボイス制度開始後の謝金の消費税

2023年10月1日から導入されてるインボイス制度では、適格請求書発行事業者からの仕入れでなければ、原則として仕入税額控除ができなくなります。つまり、謝金の支払先が適格請求書発行事業者であるかどうかによって、消費税の取り扱いが変わってきます。

ここでは、適格請求書発行事業者への謝金支払いと、適格請求書発行事業者でない個人への謝金支払いについて詳しく見ていきましょう。

適格請求書発行事業者への謝金支払い

前述した通り、インボイス制度開始後は、適格請求書発行事業者からの仕入れでなければ、原則として仕入税額控除ができなくなります。したがって、謝金の支払先が適格請求書発行事業者であるかどうかを確認し、適格請求書を入手する必要があります。

適格請求書には、登録番号や適用税率、消費税額等の必要事項が記載されているため、これを保存することで、仕入税額控除を適用できると覚えておきましょう。

適格請求書発行事業者でない個人への謝金支払い

適格請求書発行事業者でない個人に謝金を支払う場合、支払う側は消費税を加算して支払いますが、仕入税額控除はできません。

とくに、講演会の講師など、個人に支払う謝金の割合が高い事業者にとっては、大きな影響があると考えられます。このような場合、とくに予算管理には注意が必要となるでしょう。

謝金の源泉徴収と消費税

謝金を支払う際、一定の条件を満たす場合は源泉徴収が必要になります。また、源泉徴収税額の計算には消費税も含める必要があります。ここでは、謝金の源泉徴収義務と源泉徴収税額の計算方法について詳しく見ていきましょう。

謝金の源泉徴収義務

謝金を支払う際、原稿料や講演料などの報酬・料金等に該当する場合は、源泉徴収が必要になります。ただし、懸賞応募作品等の入選者に支払う賞金等については、一人に対して1回に支払う金額が50,000円以下であれば、源泉徴収をしなくてもよいことになっています。

源泉徴収が必要な場合は、以下のように消費税を含めた金額から源泉徴収税額を計算します。

源泉徴収税額の計算方法

源泉徴収税額は、消費税込みの謝金額に税率を乗じて計算します。税率は、支払先が居住者か非居住者かによって異なります。居住者の場合は10.21%、海外に住んでいる非居住者の場合は20.42%の税率が適用されます。

たとえば、居住者に11,000円の謝金を支払う場合、消費税額は814円(11,000円×8/108)となり、源泉徴収税額は1,040円(10,186円×10.21%)となります。

謝金の支払調書の提出

謝金を支払った場合、支払調書の提出が必要になることがあります。ここでは、謝金の支払調書の提出義務と提出方法について詳しく見ていきましょう。

謝金の支払調書の提出義務

謝金の支払者は、その年の1月1日から12月31日までの間に、同一の者に対して支払った謝金の金額の合計額が50万円を超える場合には、翌年1月31日までに、税務署長に対して支払調書を提出しなければなりません。

ただし、税務署長の承認を受けている場合は、提出義務が免除されます。

謝金の支払調書の提出方法

謝金の支払調書は、所轄の税務署長に提出します。提出方法は、書面での提出とe-Taxを利用した電子的な提出の2通りがあります。e-Taxを利用すれば、書面での提出よりも手続きが簡単になるため、積極的に活用しましょう。

なお、支払調書の提出期限は、原則として翌年1月31日までとなっていますが、e-Taxを利用する場合は、2月15日まで提出期限が延長されます。

謝金の消費税とインボイス制度への対応方法のまとめ

謝金に消費税がかかるかどうかは、役務提供の対価性があるかどうかで判断します。原則として、国内での役務提供に対する謝金には消費税がかかります。インボイス制度開始後は、適格請求書発行事業者かどうかの確認も重要になります。

また、一定の条件を満たす場合は源泉徴収も必要です。謝金の消費税と源泉徴収について正しく理解し、適切に処理するようにしましょう。