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支払調書の電子化方法は?背景や注意点も解説


2025.09.13

支払調書や法定調書合計表の電子化は、企業の業務効率化と法令遵守を両立させるために不可欠な取り組みです。国税庁は電子化を積極的に推進しており、e-Taxやクラウドサービスなど複数の方法を公式に案内しています。この記事では、公的機関の情報をもとに、実務で役立つ電子化の手順や注意点を解説します。

支払調書・法定調書合計表とは?

支払調書・法定調書合計表とは?

まずは、支払調書や支払調書に関連する法定調書合計表について解説します。

支払調書の基礎知識

支払調書は、企業や個人事業主が外部の個人や法人に報酬や料金などを支払った際、その内容を税務署に報告するための書類です。たとえば、フリーランスや士業、講師などに報酬を支払った場合が該当します。
支払調書には受取人の氏名や住所、支払金額、源泉徴収税額などが記載され、支払先が個人の場合はマイナンバーの記載も求められます。支払調書の種類は複数あり、報酬や料金、契約金及び賞金の支払調書が代表的です。提出義務は源泉徴収義務者に課されており、規定を超える金額を支払った場合に提出が必要です。

法定調書合計表の役割

法定調書合計表は、1年間に作成した各種法定調書の枚数や合計金額などをまとめて記載し、税務署に提出する際に添付する書類です。
正式名称は「給与所得の源泉徴収票等の法定調書合計表」といいます。支払調書や源泉徴収票などを提出する際には、必ず合計表もあわせて提出します。合計表には、支払先の人数や総支払額、源泉徴収税額などが記載されます。

支払調書・法定調書合計表の電子化が求められる背景

法定調書の電子申告義務化は、企業の業務効率化やコスト削減、税務手続きの簡素化を目的に推進されています。
2021年分以降、提出枚数の基準が引き下げられ、100枚以上の法定調書を提出する場合は電子申告が義務化されました。今後はさらに電子化の流れが強まる見込みです。電子化によって、郵送や持参の手間が省け、データの一元管理や検索も容易になります。ペーパーレス化によって保管スペースも削減できるため、多くの企業が電子化を進めています。
また、電子化は単なる業務効率化だけでなく、情報の正確性やセキュリティの向上にもつながります。紙ベースの提出では記載ミスや紛失リスクがつきまといますが、電子化によって入力内容の自動チェックやバックアップ機能が活用できるため、ヒューマンエラーの防止やデータの保全が実現しやすくなります。

参考:国税庁「No.7455 法定調書の提出枚数が100枚以上の場合のe-Tax、光ディスク等又はクラウド等による提出義務」

支払調書の電子化方法

支払調書の電子化方法

ここからは、支払調書の電子化方法を紹介します。

e-Taxソフト(WEB版)を利用した電子申告

e-Taxソフト(WEB版)は、国税庁が提供する無料のWebサービスです。パソコンからWeb上で支払調書や法定調書合計表を作成し、電子署名を付与してそのまま提出できます。
申告の流れとして、まずは利用者識別番号などの初期登録を行い、支払調書や合計表の様式を選択します。画面入力やCSVデータのアップロードで必要事項を入力し、内容を確認したうえで電子署名を付与し送信します。
e-Taxソフト(WEB版)は「報酬、料金、契約金及び賞金の支払調書」や「給与所得の源泉徴収票」など主要な法定調書に対応しています。さらに、案内に従って進めていくことで、スマートフォンやタブレットでの利用も可能です。

参考:e-Tax「e-Taxソフト(WEB版)について」

認定クラウドサービスの活用

2022年からは、国税庁長官が認定したクラウドサービス経由での法定調書提出も可能になりました。クラウドサービスにデータを記録し、税務署長にアクセス権を付与することで提出が完了します。
手順として、はじめに認定クラウドサービスに登録し、支払調書や合計表をクラウド上で作成します。その後、税務署長にアクセス権を付与して提出手続きを完了します。クラウドサービスを利用すると、ペーパーレス化とデータ一元管理が可能になり、複数拠点やテレワーク環境でも安全に運用できるという利点があります。

参考:国税庁「認定クラウドサービスの公表について」

市販の法定調書作成ソフト・クラウドサービス

市販の会計ソフトやクラウドサービス(例:弥生会計、freee、法定調書奉行クラウドなど)でも、支払調書や合計表の作成と電子申告が可能です。これらのサービスは、支払調書・法定調書合計表の自動作成やe-TaxやeLTAXとの連携、CSVデータの取り込み・出力、マイナンバー管理や自動判定機能などを備えています。
給与システムや経費精算システムと連携できるため、入力ミスや手間を大幅に削減できる点も魅力です。

公益情報システムの「謝金システム」の活用

公益情報システムの「謝金システム」は、全法人が利用できるクラウド型の支払調書作成・管理サービスです。このシステムでは、報酬や謝金の支払情報を一元管理でき、支払調書や法定調書合計表の自動作成や電子提出にも対応しています。
Webブラウザから簡単に操作でき、マイナンバー管理や会計システムとの連携も可能です。支払通知書や明細書の作成、Excel出力など多彩な機能があり、公益法人、一般法人、学校法人など、あらゆる法人で利用されています。法定調書業務の効率化やペーパーレス化、法令改正や様式変更への自動対応、セキュリティやバックアップ体制の充実など、多くのメリットがあります。

支払調書・法定調書合計表の電子化に関する注意点

支払調書や法定調書合計表の提出期限は、翌年1月31日までと定められています。提出義務の範囲は、支払金額や支払先によって異なります。たとえば、弁護士や税理士への報酬は5万円超、外交員や集金人などは50万円超など、区分ごとに基準が設けられています。
支払先が個人の場合はマイナンバーの記載が必要となり、情報漏えい防止のため厳格な管理体制が求められます。電子申告の際には電子署名や電子証明書が必要な場合もあるため、事前に準備しておくことが大切です。
また、電子化に取り組む際は、システムの操作方法やデータ保存のルールをあらかじめ社内で共有し、担当者への教育も実施しましょう。電子提出後は、受信通知や控えデータを必ず保存し、万が一の際に備えることも重要です。法令やガイドラインは毎年のように見直されるため、国税庁の公式サイトで最新情報を確認する習慣を持つと安心です。

参考:国税庁「法定調書の種類及び提出期限」
参考:国税庁「No.7431 「報酬、料金、契約金及び賞金の支払調書」の提出範囲と提出枚数等」

よくある質問(FAQ)

ここからは、支払調書の電子化について、よくある質問に回答します。

Q.e-Taxソフト(WEB版)とクラウドサービスの違いは?

e-Taxソフト(WEB版)は国税庁公式の無料サービスで、主に小規模~中規模事業者向けです。
クラウドサービスは機能が豊富で、大規模事業者や複数拠点管理にも適しています。

Q.支払調書の電子化で紙の提出は不要になる?

電子申告を完了すれば、原則として紙の提出は不要です。

Q.e-Taxと書面提出の違いは何ですか?

e-Taxはインターネットを利用して24時間いつでも申告でき、税務署に行く必要がありません。
書面提出に比べて、移動や郵送の手間がなく、還付も早く受け取れるなど業務効率化の面でも優位性があります。

まとめ

支払調書や法定調書合計表の電子化は、e-Taxソフト(WEB版)、認定クラウドサービス、市販ソフト、公益情報システムの「謝金システム」などを活用することで、効率的に実現できます。
電子化によって業務効率化やペーパーレス化が進み、法令遵守も容易になります。ただし、提出期限や提出義務の範囲、マイナンバー管理など、公的情報を必ず確認し、正しい運用を心がけてください。電子化の導入は一度きりの作業ではなく、毎年の業務改善や法令対応の一環として継続的に見直す姿勢が求められます。