インボイス制度の導入や電子帳簿保存法の改正により、請求書の電子化は企業や個人事業主にとって避けて通れない課題となりました。ただし、「電子帳簿保存法」や「消費税法(インボイス制度)」をはじめ複数存在するため、全体像をつかみにくいと感じる方も多いでしょう。
そこで、請求書の電子化に関わる主な法律や制度を整理し、それぞれのポイントをわかりやすく解説します。
請求書の電子化に関わる法律・制度一覧

請求書の電子化には、単一の法律ではなく、複数の法令や制度が関わっています。まずは全体像を以下にまとめます。
- 消費税法(インボイス制度)
- 電子帳簿保存法
- 電子署名法
- e-文書法
- 国税通則法
- JP PINT標準仕様
それぞれの法令について、もう少し詳しく見ていきましょう。
消費税法(インボイス制度)
消費税法第57条の2〜第57条の5には、適格請求書発行事業者制度(インボイス制度)が規定されています。この制度により、仕入税額控除を受けるには、登録事業者が交付する適格請求書を保存することが必須です。
適格請求書には、登録番号、取引年月日、取引内容、税率ごとの対価と税額、交付を受ける者の氏名または名称など、記載事項の要件が定められています。電子的に交付する場合も紙と同じルールが適用されるため、PDFやXML形式などであっても「適格請求書の要件を満たす」ことが重要です。
電子帳簿保存法
正式名称は「電子計算機を使用して作成する国税関係帳簿書類の保存方法等の特例に関する法律」(平成10年法律第25号)です。国税関係書類を電子的に保存するためのルールを定めており、請求書データの保存にも直接適用されます。
特に重要なのが「電子取引」に関する規定です。電子メールやクラウドを通じて授受した請求書データは、電子のまま保存することが義務とされています。
保存要件は以下の3点です。
- 見読性:画面表示や印刷で常に確認できること
- 検索性:日付・金額・取引先など主要項目で検索できること
- 改ざん防止性:訂正・削除履歴やタイムスタンプで真正性を担保すること
2024年1月以降は宥恕措置が終了し、原則として紙保存は不可となりました。ただし、やむを得ない場合には税務署長の承認により例外が認められることもあります。
電子署名法
「電子署名及び認証業務に関する法律」(平成12年法律第102号)は、電子文書に付与された電子署名により、その文書が真正に成立したものと推定する仕組みを定めています。
電子署名は改ざん防止の有効な手段の一つですが、タイムスタンプやシステムログなど他の方法でも要件を満たすことが可能です。特に外部との取引で証拠性を高めたい場合に有効です。
e-文書法
「民間事業者等が行う書面の保存等における情報通信の技術の利用に関する法律」(平成16年法律第149号)は、通称e-文書法と呼ばれます。さまざまな法律で定められた書面保存義務を、電子データでの保存に代替できるようにする包括的な枠組みです。
ただし、税務分野については、電子帳簿保存法が特別法として優先されるため、請求書の保存に直接適用されるのは電子帳簿保存法となります。e-文書法は「ペーパーレス化の基本方針」を定める法律として位置づけられます。
国税通則法
国税通則法では帳簿書類の保存義務を規定しており、保存期間は法人税法や所得税法に基づき原則7年間です。電子化した場合も保存期間は同じであり、電子帳簿保存法の要件を満たしたうえで保存する必要があります。
国税通則法は電子化の技術要件を定める法律ではありませんが、保存義務の根拠法として重要です。
JP PINT標準仕様
「JP PINT」は、デジタル庁と一般社団法人デジタル庁Peppol管理運営協議会が策定した、日本独自の電子インボイス標準仕様です。国際的なPeppol仕様を基盤とし、消費税法のインボイス要件を満たすデータ項目を備えています。
異なるシステム間でもインボイスデータを共通形式でやり取りできるようになる点が特徴です。ただし、JP PINTは法律ではなく技術標準であるため、保存には電子帳簿保存法の要件を満たす必要があります。
請求書の電子化の法律を守るポイント

請求書の電子化を進めるには、法令の理解だけでなく、自社の業務フローやシステムにどう落とし込むかが鍵となります。
ここでは、システム選定の観点と運用上の注意点を整理していきます。
法令対応を満たすシステムか
インボイス制度では、適格請求書の記載事項を正確に反映できることが必須です。システムが適格請求書のフォーマットに対応していなければ、仕入税額控除を受けられないリスクがあるからです。
また、電子帳簿保存法における「見読性・検索性・改ざん防止性」を満たす保存機能が必要です。
業務フローとの適合性があるか
法令を満たしていても、現場の業務に合わなければ定着しません。請求書の発行・承認・受領・保存の流れを見直し、次の点を確認しましょう。
- 紙から電子運用への移行がスムーズか
- 承認フローや仕訳との連携が可能か
- 外部監査や税務調査時に必要なデータを迅速に提示できるか
特に国税庁は、「電子取引データは必要に応じて画面や書面で提示できなければならない」(電帳法施行規則第4条)と定めており、使いやすさがコンプライアンスに直結します。
業種特化の対応が必要か
一般企業向けシステムが多い一方で、公益法人や医療法人など特殊な会計処理が求められる組織では汎用ソフトでは対応しきれない場合があります。
公益法人会計基準に対応しているか、事業区分管理や補助金・助成金管理に対応しているか、といった観点も重要なポイントです。
公益法人向けの「WEBバランスマン」
公益法人に特化した会計・経理ソフトとして注目されているのが「WEBバランスマン」です。公益法人特有の「正味財産増減計算書」や「事業区分管理」に対応しており、会計処理を効率化します。
さらに、請求書や証憑の電子保存機能を備え、見読性・検索性・改ざん防止性の要件を満たすことが可能です。一般的な会計ソフトでは対応が難しい公益法人のニーズに適しており、法令順守と業務効率化を両立できるツールといえるでしょう。
まとめ
請求書の電子化には、消費税法や電子帳簿保存法など複数の法令が関係し、適切な保存と運用が求められます。そのため、自社の業務フローに合ったシステムを導入し、法令対応を確実に行うことが重要です。
特に公益法人の場合、「WEBバランスマン」のような特化型ソフトを活用することで、法令遵守と業務効率化の両立が可能になります。法令を理解し、自社に合った電子化対策を進めましょう。
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