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【2025】講師謝金に源泉徴収は必要?計算方法も解説


2025.08.08

講師に講演や研修を依頼した際に、お礼として謝金を支払うことがあります。しかし、「謝金」と「報酬」の違いがよくわからない方や、源泉徴収や支払調書の発行について扱いがよくわからない方もいるでしょう。

そこで、講師謝金と報酬との違いや、講師謝金に源泉徴収が必要になるケースを紹介し、源泉徴収の計算の仕方について解説します。

講師謝金で必要な源泉徴収とは?

講師謝金で必要な源泉徴収とは

講師に対して支払う謝金は、受け取った側に税金が発生する仕組みとなっています。それが「源泉徴収」で、支払う会社側が、「所得税(雑費など)」と「復興特別所得税」の税金を差し引いて毎月国に納めるものです。

源泉徴収は受け取った金額の一部を税として納めるため、納税義務者は年間の大きな支払いが不要となり、支払い忘れなども防ぐことができます。また、国は個人の税逃れを防止しやすくなるため、この制度が導入されているのです。

講師謝金と講師報酬の違い

講師報酬と講師謝金には大きな違いがあります。まず、講師報酬とは、契約時にすでに決まっている報酬です。業務に対して支払われる現金を指します。勝手に物で支払ったり、支払いをなしにすることができません。

一方で、講師謝金は、契約にはないお礼の気持ちを込めて渡される現金や物のことです。契約にないため、支払わなくても問題にはなりません。しかし、支払った場合は、所得税の対象となるため、法律に定める源泉徴収の対応が必要なことがあります。

講師謝金で源泉徴収が必要・不要になるケース

講師謝金で源泉徴収が必要・不要になるケース

講師謝金は、源泉徴収が必要なケースと不要なケースが存在します。支払先の金額や講師の所属、契約内容によっても変わるため、以下に説明します。

講師謝金で源泉徴収が必要なケース

講師謝金で源泉徴収が必要になるケースは、個人や個人事業主の講師を招いて、5万円を超える金額を渡す場合です。例えば、勤務時間外に外部団体の依頼を受けて原稿を作成し、その謝礼が個人に支払われるときなどが挙げられます。

例えば、検収セミナーの登壇料として8万円を講師に支払うときは源泉徴収が必要です。ただし、例外として原稿料の範囲に試験問題の出題料の謝礼は原稿料に含みません。この場合、源泉徴収が不要となります。

たとえ企業や大学などに所属する講師であっても、謝金の支払いがその講師個人に直接行われる場合は、支払った企業の源泉徴収が必要となります。これは、講師としての活動が副業的な業務(本業以外)と判断されるためです。

講師謝金で源泉徴収が不要なケース

講師謝金で源泉徴収が不要になる代表的なケースは、相手が法人の場合です。講師には所属する企業があり、そこが支払先となります。

企業所属で謝金も企業が受け取る場合は、源泉徴収をその企業が行うため、依頼者側の源泉徴収は不要となります。大学やシンクタンク、団体など組織に対して講演依頼を行った場合も同様です。

また、謝金の内容次第では「交際費」(役務の対価ではない)として分類されることがあります。この場合に、講師に対する「原稿料、講演料」ではなくなり、源泉徴収の対象とはなりません。

ただし、名目や形式だけ交際費とすることはできません。謝金の実態によっては課税対象になることがあります。必要なら事前に税務署や専門家に確認しましょう。

参考:国税庁「No.2795 原稿料や講演料等を支払ったとき」
参考:国税庁「No.2792 源泉徴収が必要な報酬・料金等とは」

講師謝金における源泉徴収の計算方法

講師謝金の源泉徴収税額は計算方法が決まっています。

計算が必要な理由は、講師に謝金を支払うとき、その金額に応じて所得税と復興特別所得税を差し引く必要があるためです。

税率は、支払金額が100万円以下のときは、支払額の10.21%が源泉徴収額となります。

「源泉徴収税額 = 支払額 × 10.21%」

例えば、講演料として10万円を支払う場合は、100,000円×10.21%=10,210円となります。

一方、支払金額が100万円を超える場合は、超過部分に対して20.42%の税率が適用される決まりです。そこに一律102,100円(約10万円)を加算します。

「源泉徴収税額 = (支払額 – 1,000,000円) × 20.42% + 102,100円」

上記のように、税率を変えて、加算税上乗せ分の追加による計算式に当てはめることが必要です。

例えば、講演料が130万円の場合、130万円-100万円=30万円が超過部分となり、30万円×20.42%=61,260円となります。この金額に100万円までの基礎税額「102,100円」を加えると、源泉徴収税額は合計で「163,360円」となります。

ちなみに、謝金額が130万円で源泉徴収額が約16万円となるわけですから、この場合、全体の12%ほどが税率です。100万円より上回る金額が増すほど、全体の税率は高くなる仕組みとなります。

ちなみに、謝金の支払時に発行された領収書の中には、消費税の記載がないケースがあります。消費税不明の書類に合計しか金額の記載がない場合、原則として「消費税込み」とし、全額を源泉徴収の対象とすることがルールで決まっています。

一方で、消費税の区分が明確にあり、消費税額と合計金額の記載がある場合は、「消費税抜き」の金額で計算できます。

参考:国税庁:「No.2795 原稿料や講演料等を支払ったとき」

講師謝金における源泉徴収の旅費などの扱い

謝金は、旅費・宿泊費を含むリサーチ費用や車利用の代金などが含まれます。そのため、ホテル宿泊費や交通費・レンタカー代などの旅費は、現金で支払う場合に源泉徴収の対象です。

具体的には、通常謝礼の1万円に交通費として2万円、ビジネスホテル代として3万円を講師に直接渡すと、それらを含めた合計額6万円が源泉徴収の対象です。現金で渡しているため、経費として除くことはできません。

参考:国税庁「No.2795 原稿料や講演料等を支払ったとき」

源泉徴収とは別に講師謝金の領収書に収入印紙は必要か?

講師への謝金を支払う際に、役務の対価に収まる(講演や原稿が商売を目的としていない)場合は、収入印紙を貼る必要がありません。

ただし、これらが企業の営利目的となる場合は、印紙税が必要で収入印紙を貼る必要があります。

印紙税が必要となる謝金の額は、1万円を超える契約からです。10万円までが200円、50万円までが400円と、段階的に印紙税の金額が決まっています。

また、印紙税が必要となる書類は「課税文書」と呼ばれるもので、謝金の場合は主に「領収書」が該当します。ただし、課税文書の判定は形式よりも中身の実質的な判断によるのが基本ルールです。

参考:国税庁「講演の謝礼金受取書」
参考:国税庁「No.2792 源泉徴収が必要な報酬・料金等とは」

講師謝金の源泉徴収の支払者は「支払調書」の発行が必要

講師に対して謝金を支払う際に、支払者が作成しなければならない書類の1つが「支払調書」です。

謝金を支払ったことを証明する文書となり、講師が確定申告する際に必要です。謝礼金と一緒に手渡すか、郵送などで交付することが求められます。

支払い方法が銀行振込の例では、金融機関の記録が残るため、領収書の提出を省略する場合もあるでしょう。しかし、支払調書の発行は企業の義務となります。

発行には、国税庁の提供するフォーマットの用紙を使うことです。

「手書用」
「入力用」(パソコン作成向け)

用紙を印刷して手書きするか、パソコンにダウンロードして作成するか、必要に応じて選ぶことができます。

会計ソフトや業務管理システムを使用している場合は、「入力用」をダウンロードすることです。PDFファイル形式のファイルを一度取り込めば、書類のテンプレートとして何度も使用可能です。

参考:国税庁「No.2792 源泉徴収が必要な報酬・料金等とは」

講師謝金の支払管理におすすめなソフト

講師謝金の支払管理におすすめなソフト

謝金の支払いや源泉徴収の管理でおすすめなソフトが、公益情報システムの「謝金システム」です。

操作が簡単で職員による謝金の管理がスムーズに行えます。また、「講師マイページ」と連携してまとめて管理できるため、情報の共有が簡単です。

支払通知書の作成と共有に加え、「法定調書の印刷」機能で支払調書の発行もできます。これらの機能を活用することで、謝金の明細をWEBで各自に配信し、講師がチェックしやすい環境を作れるのです。講師依頼の多い企業にとっては、謝金への対応など業務効率化がしやすくなるでしょう。

講師謝金における源泉徴収についてまとめ

この記事では、講師謝金の源泉徴収について、必要な場合や具体的な計算方法などを確認しました。

支払調書の作成や源泉徴収の納付が謝金支払側の義務となります。そのため、企業はしっかりと講師謝金の源泉徴収に必要な基本知識を押えましょう。