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【2025】公益法人会計基準とは?普通法人との違いや提出書類、改正内容を解説!


2025.08.29

公益法人は、税務にする、優遇を受けられます。普通法人とは異なり、公益法人会計基準というものを元にした会計が必要になります。とはいえ、「公益法人会計基準とはどういった基準なのか」「必要な書類がわからない」という方も多いでしょう。

そこで本記事では、公益法人会計基準の概要や普通法人の違い、提出書類、具体的な改正内容などについて解説していきます。

公益法人会計基準とは?

公益法人会計基準は、昭和52年に設定され、5回の改正を伴いながら、現代まで公益法人が会計を行うための基準の指標とされています。公益法人会計基準は会計を行う際に作成が義務付けられている「財務諸表」と、財産目録の作成に関する内容の2種類が基本となっています。

継続的な活動を行う公益法人では、決算時に公益法人会計基準に基づいた「財務諸表」と明細、財産目録の作成が必要です。継続的な活動を想定している公益法人だけが遵守する基準になるため、継続しない公益法人や、継続的な事業を終わらせる公益法人は該当しません。

公益法人会計基準と普通法人会計基準との違い

公益法人会計基準では、公益法人が遵守する必要があります。しかし、普通法人では公正妥当と認められる会計基準を元にすれば問題はないため、会計の内容に違いがあります。

なかでも、公的法人と普通法人の代表的な違いは正味財産の区分です。正味財産とは、法人の純資産のことです。普通法人の場合、正味財産を区分する必要はありません。しかし、公益法人会計基準では、財務諸表内で正味財産を指定正味財産と基金、一般正味財産の3通りに分けることが求められます。

それぞれの概要は、以下のとおりです。

  • 一般正味財産:公益法人が運営によって増やした資産になるため、自由に使用可能
  • 指定正味財産:目的を伴って寄附された資産になるため、使用不可
  • 基金:ある目的を持って公益法人が資金を集めるために設けるもの

    公益法人の会計は普通法人とは異なり、必要な会計内容が異なり、複雑になります。

公益法人会計基準における必要書類

公益法人会計基準に基づいた会計を実施する場合、以下の書類の準備が必要です。

  • 賃貸対照表
  • 活動計算書(正味財産増減計算書)
  • 附属明細書
  • キャッシュ・フロー計算書
  • 財産目録

1つずつ順番に紹介していきます。

貸借対照表

賃借対照法とは、会社の財政状況が分かる書類のことです。公益法人会計基準では、基本の決算書となる賃借対照表によって「事業年度末における全ての資産、負債と正味財産の状態を、明瞭に表示しなければならない」と定められています。どれくらいの資産と負債があるのか、資産から負債を引いた純資産である正味財産はいくらなのかを記載した賃借対照表を用意し、公益法人財政の状態を明らかにする必要があります。

活動計算書(正味財産増減計算書)

活動計算書とは、正味財産の増減を表示するための資料のことです。、賃借対照表とは別に、活動計算書にも記載しなければなりません。株式会社の「損益計算書」と同様の役割を担います。活動計算書では、年度末に以下の内容を記載します。

  • 一般正味財産
  • 指定正味財産
  • 基金

正味財産増減計算書を作成することで、事業年度中にどれくらいの財産が増減したのか、その原因についても確認できます。

附属明細書

附属明細書とは、賃貸対照法と損益計算書の補足説明に使用される書類のことです。必ず必要な書類ではなく、内容の補足が必要な場合に附属明細書を用意しなければなりません。附属明細書には、基本財産または特定資産の明細、将来的なコストや損失などのためにあらかじめ用意しておく引当金に関する内容を記載します。

キャッシュ・フロー計算書

キャッシュ・フロー計算書とは、事業年度期間における資金の増減を「事業活動」「投資活動」「財務活動」の3パターンに分けて表示する書類のことです。会計監査人を設置する大規模な公益法人の場合、キャッシュ・フロー計算書が必要となります。キャッシュ・フロー計算書で確認できる資産の投入金額、事業における増減内容、事業活動と投資活動、財務活動ごとに、それぞれリストを作成します。

財産目録

財産目録とは、公益法人が保有する全ての財産と負債を記載する書類のことです。財産目録では、具体的な数字だけでなく、使用目的の記載も必要です。財産目録の内容は、賃借対照表と照らし合わせた際に、計算が合うようにしなければなりません。

公益法人会計基準の改正内容

公益法人会計基準の改正内容

公益法人会計基準は、数年に1度、改正されています。近年では、2025年4月に改正がありました。改正内容としては、主に以下の3つです。

  • 財務報告の目的変更
  • 貸借対照表の内容変更
  • 正味財産増減計算書から活動計算書への名称変更

1つずつ順に紹介していきます。

財務報告の目的変更

2025年4月以前の現行基準では財務規律判定を目的としていました。2025年4月以後、公益法人への寄付の増加、提供資金や資産が適切に使用されているかどうかの確認が必要になり、多様なステークホルダーへの情報開示を目的とすることに目的が変更されました。公的法人の財務諸表を閲覧する人口が増えたことも、変更の要因です。

貸借対照表の内容変更

賃貸対照表では、以下の内容が変更になりました。

  • 表示区分の統一
  • 位置付けの変更

現行基準では、賃借対照表の区分が分かりづらいという問題がありました。そのため、一般企業の財務諸表と同様に、流動資産・固定区分を表示し、基本財産・特定資産の情報は必要に応じて注記で開示する流れに改正されています。

新基準では、公益法人にも賃貸対照表内訳表の作成が必要になります。新たな位置付けの変更に伴い、従来の賃貸対照表内訳表は廃止され、従来よりも柔軟な記載方法に変更となりました。

正味財産増減計算書から活動計算書への名称変更

新基準では、正味財産増減計算書から活動計算書への名称が変更されました。名称変更の背景には、一般的な財務知識で読み解ける財務諸表を目指す意向が示されています。また、以下の内容の変更も行われています。

  • 一般純資産と指定純資産の区分を注釈に表示
  • 純資産全体の増減を経常活動区分とその他活動区分の区分で表示
  • 費用科目を活動別分類で表示

今後、公益法人会計に携わる方は名称と変更内容を把握し、混同しないように注意しましょう。

公益法人会計基準の改正後に行う内容

公益法人会計基準の改正後に行う内容

公益法人会計基準の改正により、会社内の動き方が変わるでしょう。決算前のタイミングで改正後の基準に沿った動き方を社内で浸透させておくのは非常に重要です。ここからは、公益法人会計基準の改正後の動き方について紹介します。

社内業務フローの見直し

まずは、改正後の基準に沿って社内業務フローの見直しを行いましょう。フローの見直しでは、区分経理の徹底や注記情報の理解・収集が必要不可欠です。適切に会計情報を区分し、項目ごとに情報が分けられる社内業務フローを目指しましょう。

会計システムへの対応

公益法人会計基準の改正に伴い、会計システムへの対応も必要です。なぜなら、改正に伴い。財務諸表の根本的な見直しが必要になったからです。注記情報への作成内容の検討や勘定体系の見直しなど、今後とも使用できる会計システムにバージョンアップする必要があります。

公益法人会計基準を元にした会計を行う際の注意点

公益法人会計基準を元にした会計を行う際の注意点

公益法人会計基準を元にして会計を行う場合、以下の点に注意しましょう。

  • 収益の区分を間違わない
  • 基金に関する記載を間違わない
  • 必要書類を把握する

公益法人の会計では、会費や寄附など、特殊な収益が多くあります。そういった収益は混同しやすいため、間違った区分にしないよう注意が必要です。

公益法人では、将来的な出費などに使用するために、積立として基金を設けることがあります。ただ、その基金は、正味財産増減計算書に書かれる基金とは別物です。活動計算書(正味財産増減計算書)に記載する基金は、実質的な資本として使用する目的で集めたものになるため、積み立てた基金を正味財産増減計算書に書くのは誤りです。

公益法人会計基準では、特定の条件を満たしていれば、提出書類を省略できます。代表的なものとしては、「キャッシュ・フロー計算書」です。キャッシュ・フロー計算書は小規模な公益法人の提出・作成が不要です。条件によって提出不要の書類もあるため、自社がどのような書類の提出が必要なのかについては事前に確認しておくことが大切です。

公益法人会計基準に対応しているソフト3選

公益法人会計基準に基づいた会計を行う場合、「PCAクラウド 公益法人会計DX」「FX4クラウド(公益法人会計用)」「WEBバランスマン」の会計ソフトがおすすめです。会計ソフトの使用は、経理や会計に関する知識が乏しい方でも、サポートしてくれるため、安心して利用できます。

使用方法は会計ソフトによって異なりますが、事前に用意されているフォーマットに文字や数字を入力するだけで完了です。簿記の知識が必要になる「財務諸表」についても、会計ソフトを使用することにより、簡単に作成できます。

PCAクラウド 公益法人会計DX|事業区分ごとの予算作成が可能

「PCAクラウド 公益法人会計DX」とは、ピー・シー・エー株式会社が提供している公益法人向け会計ソフトです。法改正にも対応しており、最大5階層の科目を登録できます。また、事業区分ごとの予算作成も可能になっているため、情報が混同することがありません。わかりやすいインターフェースを活用しているため、初めての方でも利用しやすいソフトです。

FX4クラウド(公益法人会計用)|大容量のデータストレージを完備

「FX4クラウド(公益法人会計用)」は、TKCグループが提供する公益法人向け会計ソフトです。FX4クラウド(公益法人会計用)は、「電子帳簿ソフト法的要件認証」第1号認証を取得しており、安心・安全に使用できるソフトです。また、10年分の仕訳と2年分の伺書データを保管できるデータストレージがあります。データが飛んでしまう恐れもないため、長く使用し続けられます。

WEBバランスマン|簡単で分かりやすいインターフェース

「WEBバランスマン」は、公益情報システム株式会社が提供している公益法人向けの会計ソフトです。簿記の知識不要で誰でも使える簡単設計や資金・損益ベースの予算書を出力できるのが強みの1つです。賃貸対照表や内訳表など、公益法人会計基準に必要なデータ入力や出力も簡単にできるため、手に取りやすい会計ソフトともいえます。

公益法人の会計基準は把握しておこう

公益法人の会計基準は把握しておこう

公益法人会計基準は、公益法人が健全な会計を行うために欠かせません。公益法人会計基準を満たすことができなければ、公益法人としての信頼を失ったり、責任を追求されたりする恐れがあります。そのようなことにならないために、本記事を参考に、公益法人会計基準の内容をしっかり把握し、公益法人の運営を行いましょう。