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公益法人の収支予算書とは?見方と書き方を徹底解説


2025.11.19

公益法人を運営するうえで、「収支予算書」の作成は実務上非常に重要なステップです。
今回は、「内閣府」および「公益社団法人及び公益財団法人の認定等に関する法律施行規則(以下、認定規則)」に基づき、公益法人の実務担当者の方が「収支予算書」を理解・作成・活用できるよう、構成に沿って丁寧に解説いたします。

公益法人の収支予算書とは?

公益法人における収支予算書とは、1年間の事業活動にあたって、収入(収益)と支出(費用)についてあらかじめ見込みを立てて示した書類です。実際に終わった後の「実績」を示す決算書とは異なり、その法人が次年度にどのような活動を展開し、どのような財源配分を想定して運営するかを示します。実務上、この書類は活動計画書とともに提出・備置義務がある書類とされています。

また、認定法人においては認定規則第27条および第30条にて「事業年度開始前までに作成し据え置く」ことや、「経常収益・事業費・管理費・経常外収益・経常外費用」という区分の表示を義務付けている点も重要です。

参考:https://octax.jp/koeki/yosan/?utm_source=chatgpt.com

つまり、収支予算書は「法人の年間活動の資金計画」を可視化する書類であると同時に、外部へ説明責任を果たすための重要な資料といえます。

公益法人の収支予算書の項目の見方

収支予算書を正しく読み解くためには、表示されている各項目が何を意味するかを理解しておくことが不可欠です。ここでは、主な区分とその見方について解説します。

経常収益

この項目には、通常の事業年度における継続的な収入が含まれます。具体的には、会費、寄附金、補助金、事業収益、財産運用益などが挙げられます。公益法人の場合、収益の使途が公益目的事業や収益事業にどう配分されるかも注目すべきポイントです。

事業費

事業費とは、公益目的事業および収益事業を運営するための支出を指します。認定規則では「公益目的事業に係る事業費」「収益事業等に係る事業費」という区分の表示を求めています。事業ごとに実施予算を立て、どの程度の費用をかけるかを示すための重要な項目です。

管理費

管理費は、法人全体を運営するための一般管理活動に係る費用です。たとえば、人件費(事務局スタッフ)、事務所賃料、光熱費、消耗品費などが該当します。これらを明確に分けておくことにより、公益目的事業に直接使われる費用との区別がはっきりします。

経常外収益・経常外費用

これらは、通常の事業活動とは別に発生する収入・支出を示します。例えば、固定資産売却益や災害補償費用など、毎年発生するものではない項目です。認定規則では、これらも区分して表示することが必要とされています。

公益目的事業に係る財源の明示

認定規則第48条第3項では、第一項第一号・第四号・第五号に掲げる区分について、「公益目的事業に係る額を明らかにしなければならない」と定められています。つまり、経常収益や経常外収益、経常外費用などの項目においても、公益目的事業に係る部分を区分して表示すべきということです。

これらの項目を理解することで、収支予算書が「何にどれだけお金を使うか」「どの事業がどれだけの収支を想定しているか」を読み取るための設計図であることが分かります。

公益法人の収支予算書の書き方

次に、実際に収支予算書を作成する際の流れとポイントを解説します。段階的に進めていくことで、年度開始前から実効性ある予算書を作ることができます。

ステップ1:事業計画と財源見込みの整理

まず、法人が実施する公益目的事業・収益事業・法人会計の各区分において、次年度にどんな活動を行うかを整理します。事業の内容や目標を明確にしたうえで、必要となる費用と見込まれる収入を洗い出します。財源の見込み(例:寄附金、補助金、会費、事業収益など)を慎重に立てることが重要です。記事でも「どの事業にいくらお金をかけられるのか」を明確化する書類であると説明されています。

ステップ2:各区分ごとの収益・費用設定

次に、収益・費用を会計区分(公益目的事業会計・収益事業等会計・法人会計)および財源区分別に整理します。事業費・管理費・経常外項目などをそれぞれ設定し、可能であれば活動別・事業別に内訳を作ることで、予算精度が高まります。なお、令和6年会計基準導入に向けた様式変更についての解説でも「活動別分類」が重視されている点が指摘されています。

ステップ3:予算の配賦と調整

収益・費用を設定したら、各会計区分への配賦を具体化します。公益目的事業会計へどの程度資源を投入するか、収益事業等会計はどれだけの利益を見込むか、法人会計はどの程度収支均衡または控えめな黒字を設定するかなどを検討します。専門記事では「収支相償」「公益目的事業費率50%以上」などの財務3基準も紹介されており、法人運営の健全性を確保するためにはこうした指標も参照すべきです。

ステップ4:様式作成と内部承認

収支予算書を実際の帳票化する際には、認定規則第48条に定められた区分表示が必要です。具体的には「経常収益・事業費・管理費・経常外収益・経常外費用」の表示が求められています。必要に応じて公益目的事業、収益事業等の別を明示することも求められます。また、理事会や評議員会で予算案を承認し、定款や内規で定められた手続きを経ることで、責任ある運営体制を整えましょう。

ステップ5:公表・備置および予実管理

法人設立・認定等において収支予算書および関連書類の備置が義務付けられています。定期提出書類の一部として行政庁への提出やウェブ公開が求められる法人もあります。
また、予算と実績の対比を行い、差異の分析や補正予算の作成を行うことで、運営の透明性と適応性を高めることができます。

公益法人の収支予算書に便利な会計ソフト

収支予算書を作成・運用するにあたって、会計ソフトを活用することで効率化や正確性の向上が期待できます。公益法人向けの会計ソフトを選ぶ際には、公益法人ならではの会計区分や報告様式に対応していることがポイントとなります。

公益法人向け:「WEBバランスマン」

公益法人専用の会計ソフトとして、WEBバランスマンが挙げられます。特に、公益法人会計基準に対応し、公益目的事業会計・収益事業等会計・法人会計という区分の管理がしやすく設計されています。これにより、収支予算書作成時の会計区分の区分や科目整理、レポート出力、財源区分別の集計が手軽になります。

導入にあたっては、ソフトの機能だけでなく、法人の事業内容・規模・予算数値の管理ルーチンに合った仕組み設計が重要です。このような専用ソフトを用いることで、収支予算書作成と併せて予実管理、内部統制、報告開示の負荷を大幅に軽減できます。

公益法人の収支予算書についてまとめ

公益法人の収支予算書は、法人運営の前提となる「何を」「どれだけ」「どこに」資源を配分するかを示す設計図です。改めて、以下のポイントを押さえておきましょう。

  • 収支予算書とは、年度開始前に作成する「収入と支出の見込み」を示す書類であり、公益法人においては定款や定期提出書類の一部として位置付けられています。
  • 主な項目として、経常収益、事業費、管理費、経常外収益、経常外費用があり、さらに公益目的事業・収益事業等の区分が表示される必要があります。
  • 作成の流れとして、事業計画・財源見込みの整理、区分ごとの収益・費用設定、配賦・調整、帳票化・承認、備置・予実管理という5つのステップが参考になります。
  • 専用会計ソフト(例:WEBバランスマン)を活用することで、表示区分の整備、報告様式への対応、予実管理の効率化など、実務負荷を軽減できます。
  • 会計制度改正(令和6年会計基準の導入)などの影響により、様式変更や活動別表示などの対応が求められるため、将来を見据えた体制整備も重要です。

収支予算書は、ただの帳票ではなく、法人のビジョンや戦略を数値で具現化するツールでもあります。適切に作成・活用することで、支援者・行政・内部関係者への説明責任を果たすとともに、法人の持続的な運営基盤強化に結びつけることができます。是非、この記事を実務担当者の皆さまにとって有益なガイドとしてご活用いただければ幸いです。