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公益法人の会計基準とは?具体的なルールも紹介


2025.10.03

公益法人が活動を続けるためには、活動資金の使い道などを明示することが必要です。それをルール化したのが「公益法人会計基準」です。しかし、公益法人の会計基準は、一般企業の会計基準とは少し異なります。

本記事では、公益法人の会計基準について概要を説明し、目的や「企業会計基準」との違い、必要書類などを解説します。

公益法人の会計基準とは

公益法人の会計基準とは

公益法人会計基準とは、公益法人が財務諸表を作成するときに守るべきルールのことです。なぜ公益法人には独自の基準が必要か、それには理由があります。

そもそも公益法人とは、社会の利益や福祉への貢献を目的に設立される法人を指します。具体的には、「公益社団法人」や「公益財団法人」のことです。本来、公益法人は営利を目的としません。事業の中で出た利益は、公益活動の資金や人件費などに分配される必要があります。

これらの会計処理を利害関係者が正しく知るためには、公益法人の会計基準を守った書類を用意して、公開・提出することが不可欠です。公益法人は主に寄付や会費、補助金などを源資として活動するため、利害関係者の中には、寄付者や補助金を決定した行政が含まれます。そのため、利益ではなく、資金の用途に焦点が当たるような会計基準が中心です。

公益法人の会計基準の具体的なルール

公益法人の会計基準では、具体的に以下のような基準で書類を作成します。以下は、経理担当者が会計処理で必要となるルールです。

  • 財務諸表や附属明細書などの必要書類を作成する
  • 事業や資金などにあわせた計上をする
  • 取引などを発生主義で記帳する
  • 固定資産は減価償却を行う
  • 規模に応じて会計監査を実施する

    公益法人は、上記を含むガイドラインの会計基準を守って帳簿や書類を作成する必要があります。例えば、公益法人の会計は基本的に「発生主義」で、金銭の授受が完了した時点ではなく、取引のあった時点で記帳することが決まりです。

作成する類の内容や区分方法、形状の仕方なども公益法人独自の基準を知っておく必要があります。

公益法人の会計基準が適用される法人

公益法人会計基準は、公益法人を適用対象とします。法的に「公益法人」に該当するのは、「公益社団法人」と「公益財団法人」です。

一般的には、病院や学校、宗教法人も公益法人と呼ばれることがありますが、正式なものではなく、上の2法人のみです。

一般社団法人と一般財団法人が「公益法人認定法」の認定条件を満たして、正式に公益法人となります。ただし、法的になった公益法人だけを対象とするのではなく、以下の法人も会計基準の対象に含まれます。

  • 公益認定を申請している一般社団法人・一般財団法人
  • 公益目的のために一定の額を使う計画を実施の法人
  • 特例民法法人(旧民法改正後も存続を許可された社団法人・財団法人や移行法人)

以上に含まれる法人は、公益法人の会計基準に従う必要があります。法律上では、「認定法第2条第3号の公益法人」、「整備法第123条第1項の移行法人」、「認定法第7条の申請法人」などと表記される法人のことです。

参考:公益法人information「公益法人会計基準の運用指針」

「公益法人会計基準」と「企業会計基準」の違い

公益法人と一般営利企業では、基本となる会計基準が異なります。それが「公益法人会計基準」と「企業会計基準」の違いです。

「企業会計基準」は公益法人向けの資金の流れや透明性を明確にすることを目的とするのに対して、「企業会計基準」は、株主や投資家に対して利益や配当を示すことを目的としています。目的が違えば、具体的な基準も異なるのは当然の流れです。

具体的な違いを示すと、資金名の名称や区別に変更が加わります。

例えば、企業会計では利益計算の財務諸表(特に貸借対照表、損益計算書、キャッシュ・フロー計算書)が重視されます。しかし、公益法人では「活動計算書」を使って事業ごとの収支や資源活用の成果を明示します。特に純資産の区分では、公益法人が「指定純資産」と「一般純資産」など複数に分けて表示する点です。

例えば、建物の修繕費に使うことを条件に寄付された資金はこの内の「指定純資産」として区別して表示されます。株主の利益を基準にしません。資金の使用目的に重点を置いて、書類作成するルールです。

ただし、公益法人でも営利の子会社があるような場合は、企業会計基準を用いた会計書類の作成ができます。

公益法人の会計基準で作成する書類

公益法人の会計基準で作成する書類

公益法人は会計基準のルールを守って、財務諸表や関連書類を作成する義務があります。以下は、公益法人が作成する必要のある各種書類です。

貸借対照表

まず、貸借対照表は、法人のその時点の財政状態をあらわす書類です。資産、負債、純資産の区分ごとに残高を示し、財産の保有額や、どれだけの負債を抱えているかを明らかにします。

特に公益法人では、純資産を「指定純資産」「一般純資産」「基金」などに分けます。

財団が寄付者から「奨学金専用」などの寄付を受けた場合は、使途が制限されているため「指定純資産」に計上される決まりです。一方で、寄付者の指定がなく自由に活動に充てられる寄付金や事業収益は「一般純資産」となります。また、設立時に拠出された基本財産や団体の基盤として積み立てる資金は「基金」として区別され、法人の運営資金となります。

活動計算書(正味財産増減計算書)

活動計算書は、法人の活動成果を示す書類です。一定期間で区切って記載します。以前は「正味財産増減計算書」と呼ばれていましたが、改正された現在は活動成果を分かりやすく示すために「活動計算書」に名前とルールが変更されたのです。

活動計算書は、公益目的事業費、収益事業費、管理費などに区分され、源資がどの活動に使われたかを明確にする書類です。企業会計基準の「損益計算書」にあたるものですが、利益を示すのではなく、公益活動の成果を示す点が異なります。

キャッシュ・フロー計算書

キャッシュ・フロー計算書は、現金などの収入と支出の流れを示す書類です。活動計算書が発生したときの会計処理に対し、キャッシュ・フロー計算書は法人の現金の動きを捉えます。

赤字か黒字かという単純な表記ではなく、営業活動・投資活動・財務活動などで区分したキャッシュの不足や余剰を数字で把握する材料となるのです。

公益法人が短期的に使える資金の状況や資金繰りを判断できます。小規模法人で会計監査人を置いていない場合は作成が免除されるものです。しかし、自主的に作成して資金管理に役立てる法人もあります。

注記

注記は、財務諸表の数字だけでは表せない補足情報を記載する部分です。公益法人では寄付金や補助金の使途制約の有無や残高、取り崩しの内容を詳しく示す必要があります。

会計の方針や将来の活動に関連する事項も注記で説明されます。例えば、災害支援基金がどのような条件で活用されるのかを注記に記載することで、被災地域への支援などに使った分を外部に明確な情報として伝えられます。

附属明細書

附属明細書は、財務諸表や注記ではわからないことを補完する書類です。公益法人では、この附属明細書を通じて、公益目的で使われた資金の割合「公益目的事業比率」や「収益事業の割合」を示します。

附属明細書の情報から、割合が一定以上なら公益法人としての条件を法的に満たしていることを確認できます。

財産目録

財産目録は、公益法人が保有するすべての財産を一覧にした書類です。資産の種類や金額を明確にし、外部に開示することで透明性を高めます。寄付者に内緒で蓄財していたなどの問題や不正が起こりにくくなります。

企業会計には存在しない公益法人特有の会計基準です。例えば、寄付によって取得した土地や建物を財産目録に記載することで、寄付者に対して資産の適切な管理を示せます。

参考:公益法人information「公益法人会計基準」
参考:公益法人information「公益法人会計基準の運用指針」

公益法人向けにおすすめな会計システム「WEBバランスマン」

公益法人の会計業務は、「公益目的事業」と「収益事業」などを分けて処理する必要があるため、複雑になりやすい特徴があります。そこで、おすすめの会計システムが「WEBバランスマン」です。

公益法人向けの機能が多彩で、公益法人会計基準に基づいて、財務諸表や附属明細書などの必要書類を自動作成できます。クラウド型のため会計情報の複数人共有や他のオプション機能との連携なども可能です。公益法人に特有の会計基準にそったルールの確認機能も備えています。

公益法人の会計基準に関するまとめ

公益法人会計基準は、公益社団法人や公益財団法人が書類を作成するためのルールです。基準に従い作成される貸借対照表や活動計算書などの財務書類を通じて、源資の流れや使われ方を利害関係者は把握することができます。そのためには、作成が必要な書類とその会計基準のルールを知ることが大切です。