経理・会計業務において「電子帳簿保存法(電帳法)」の導入が急務となっています。紙の帳簿・書類から電子データ保存へ転換することで、業務効率化や法令対応力が高まる一方で、導入には制度理解・運用設計・ソフト選定が必要です。
この記事では、電帳法の具体的な導入手順やメリット、注意点、おすすめのソフトをわかりやすく解説していきます。
電帳法の導入方法・手順
電帳法を組織で導入するには段階的な流れを設けるとスムーズです。以下、典型的な手順を整理します。
現状分析と導入方針の策定
まずは、現在の帳簿や書類保存の状態を把握します。
次の項目について確認・整理してみてください。
- 紙または電子のどちらで保管しているか
- どの書類がどの保存区分に該当するか
- 取引先からの請求書や領収書の形式
- 会計ソフトの状況
そのうえで、電子保存を進める範囲(全帳簿か一部か)、対象となる書類、運用ルール、移行スケジュールを明確化します。方針が曖昧なまま進めると運用が混乱しやすいため、経営層や経理部門で合意しながら進めることが重要です。
制度要件の整理とシステム選定
次に、電帳法の保存要件を整理します。例えば「訂正・削除履歴が残る」「検索性が確保される」「相互関連性がある」などの基準が、優良電子帳簿制度において掲げられています。
そのうえで、会計ソフトや電子帳簿保存システムが要件を満たしているかをチェックし、自社の業務に即したシステムを選びましょう。例えば、クラウド型かオンプレミス型か、会計ソフトとの連携、アクセス管理や証拠保存の機能などを比較します。
運用ルールの整備と教育
選定したシステムを運用に乗せるためには、社内の運用ルール整備が不可欠です。誰が承認・入力・保存を行うか、どのデータをどの形式で保存するか、バックアップ体制はどうするかなどを明文化します。
併せて、経理担当者や関係部門に対する教育・研修を実施し、電子保存を日常の業務として定着させるための土台を作ります。
試験運用と本格導入
まずは限定範囲(例えば一部帳票や部署)で試験運用を行い、実際に電子データ保存・検索・監査対応ができるかを検証します。課題があれば改善を図ったうえで、全社展開へ移ります。
移行期には紙と電子の併存が発生しうるため、その期間の運用もルール化しておきましょう。
その後、本格的な電子保存運用へ移行し、関係者へ展開・定着を図ります。
継続的なモニタリング・改善
運用開始後も、定期的に運用状況を確認し、トラブルや改善点を洗い出すことが必要です。制度改正への対応も求められるため、システム・運用ルール両面でアップデートを継続することが、安定運用の鍵となります。
電帳法を導入するメリット

電子帳簿保存法(電帳法)を導入する最大のメリットは、業務の効率化ができることです。請求書や領収書などの国税関係書類を電子データで保存できるため、紙の印刷・保管コストを大幅に削減できます。
従来の紙保存では、書類のファイリングや倉庫保管、検索の手間が課題でしたが、電帳法に対応したシステムを導入することで、日付や金額、取引先名などの条件でスムーズに検索できるようになります。これにより、監査対応や税務調査の準備時間も短縮され、業務全体の生産性が向上します。
また、法改正によりタイムスタンプ要件や訂正・削除ログの管理が明確化されたことで、電子データの信頼性も高まりました。正しく導入すれば、コンプライアンス強化とDX(デジタルトランスフォーメーション)の推進を同時に進められます。
電帳法を導入する際の注意点
導入にあたっては、いくつか注意すべきポイントや実務上のコツがあります。ここでは代表的なものをご紹介します。
保存要件の理解不足による誤運用
電帳法では、保存対象・保存形式・検索・訂正履歴など多くの要件が定められています。制度理解が不十分だと「電子にしたから安心」という誤解を招き、法的に問題となる運用になるリスクがあります。例えば、電子取引に関しては、受領した電子データを紙に出力して保存することができないケースがあります。
移行期における紙電子併存対応
電子化への移行期には、紙と電子の併存が生じやすく、以前の方式と新方式が混在して運用混乱を招くことがあります。移行スケジュールと併用ルールを明確にしておくことが重要です。
システム・運用体制の整備不足
電子保存を実現するためには、システム(タイムスタンプ、検索機能、アクセス管理、バックアップなど)だけでなく、運用ルールや担当者体制が整っていなければなりません。特に、アクセス権限の設定・証憑の管理・訂正削除履歴の保全など、外部監査対応も含めた整備が必要です。
法改正への対応
電帳法は改正があり、特に電子取引データ保存については義務化が進んでいます。最新の法令や行政通達を把握し、制度変更に対して柔軟に対応できる体制を持っておく必要があります。
書類の対象範囲の誤認
どの書類が対象となるか誤解されることも多いです。たとえば、紙で受領した書類をそのまま保存するか、電子データで受領したものを紙で保存して良いかといった点には細かな条件があります。
以上のような注意点を理解した上で、導入設計・運用設計を慎重に進めることが、成功の鍵となります。
電帳法の導入におすすめのソフト

電帳法に対応しているおすすめのソフトをご紹介します。公益法人向けと通常法人向けのソフトを紹介するので、自法人に適したものを参考にしてください。
公益法人向け:WEBバランスマン
WEBバランスマンは公益法人に特化した会計ソフトで、電帳法対応機能を備えています。世界150か国以上で利用されているSSL証明書を取得しており、安全性にも優れています。
公益法人会計基準(平成16年・20年改定)にも準拠しているため、制度改正にも柔軟に対応可能です。このソフトを導入することで、公益法人特有の会計処理や電帳法にもスムーズに対応できます。
通常法人向け:マネーフォワード クラウド会計
中小企業や通常法人向けのおすすめの会計ソフトは、マネーフォワード クラウド会計です。電帳法の要件を満たすストレージや連携・会計機能を備えており、初心者でも使いやすい設計となっています。経理業務の効率化やペーパーレス化を目指す法人におすすめの会計ソフトです。
電帳法とは?
電帳法は、正式には「電子計算機を使用して作成する国税関係帳簿書類の保存方法等の特例に関する法律」という名称で、電子帳簿保存法とも呼ばれています。国税関係帳簿や書類を電子データとして保存できるルールを定めた法律です。
この法律の主な意義は、紙媒体による保存から電子保存への移行を制度として認めることで、経理・会計業務の効率化や企業のデジタルトランスフォーメーションを促す点にあります。
電帳法で定められている保存方法には大きく三つの区分があり、
- 電子帳簿等保存(コンピュータ作成帳簿を電子データで保存)
- スキャナ保存(紙の書類をスキャンして電子データとして保存)
- 電子取引データ保存(電子データでやりとりされた取引書類を電子データとして保存)
特に2022年1月から施行された改正では、電子取引のデータ保存義務化に向けた制度変更が実施されており、すべての事業者が対応を検討する必要があります。
このように、電帳法は単なる会計ツールの問題ではなく、帳簿保存・書類管理・取引証憑の扱いなど幅広い経理フローに影響を及ぼします。
導入を検討する際は、法律の目的と各保存区分の意味をしっかり把握しておくことが大切です。
電帳法の導入についてまとめ
電帳法の導入は、経理・会計業務を見直すきっかけとなります。電帳法の一般的な導入手順としては、下記の通りです。
- 現状分析 を行う
- 制度要件整理をする
- システム選定する→
- 運用ルール整備し、教育する
- 試験運用を行い、本格的に導入する
- 継続的に改善していく
導入を成功させるには、制度理解・運用設計・継続的な改善が不可欠です。電帳法に対応した会計ソフトを利用すると、スムーズに導入しやすくなるため、ソフトの導入もぜひ検討してみてください。
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