日本国内でおこなわれている電子取引の数は年々増加していて、今後も多くの事業者が電子取引を行うことが予想されています。電子取引の数が増えたことで、整備しなければいけなくなったのは電子取引を適正に行うための法律です。このような法律の一つが電子帳簿保存法です。この記事では、電子帳簿保存法の対象となっている書類や、スキャナ保存の要件について、詳しくご紹介します。
電子帳簿保存法とは?
電子帳簿保存法は1998年に施行された法律です。この当時から、コンピューターを使用した電子取引が今後増加することが予想されていたので、税金の徴収を適切にできるようにするため、こうした法律が作られました。この法律が作られたことにより、所得税法や法人税で決められている方法以外の方法で、帳簿などの書類を保存できるようになりました。この法律には電子取引に関する規定の他に、スキャナを使用した保存の方法なども規定されています。
この法律は施行されてから度々改正されています。スキャナを使用した保存の規定が追加されたのは、2005年の改正です。2015年の改正ではスキャナを使用した保存ができる要件が変更されています。2016年にも改正が行われ、通常のスキャナによる保存だけでなく、スマートフォンやデジタルカメラで撮影した画像も、保存用として使えるようになりました。2020年の改正では、クラウドなどのサービスも保存のために使用できるようになりました。
2022年の法改正では、さらにさまざまな規定が緩和されています。この法律の適用を受けるためには、事前に所轄の税務署長の承認が必要でしたが、改正によりこのような承認を受ける必要はなくなりました。スキャナを使用して保存する場合には、自筆の署名をする必要もなくなっています。スキャンをしたデータを定期的に検査する義務もなくなったので、スキャンをした元の書類はそのまま処分できるようになりました。
電子帳簿保存法は原則7年保存が必要
電子帳簿保存法(電帳法)の対象となる国税関係帳簿書類の保存期間は、基本的に7年間と定められています。しかし、この「7年」は一律ではなく、事業者の形態や所得の状況によって例外や特例が存在するため、注意が必要です。
例えば、法人の場合、原則として確定申告書の提出期限の翌日から7年間の保存が必要ですが、青色繰越欠損金が生じた事業年度に関する書類は10年間の保存が義務付けられます。さらに会社法上の会計帳簿の保存期間も10年であるため、法人では安全を期して10年保存とするのが確実です。
青色申告の個人事業主においては、帳簿類や決算関係書類、そして現金預金取引関係書類は原則通り7年間ですが、請求書や見積書といったその他の書類は5年間と短縮されます。ただし、領収証は原則7年保存が必要ですが、前々年の事業所得等が300万円以下の場合は5年間に短縮される特例があります。
このように、電帳法の保存期間は「原則7年」をベースとしつつも、書類の種類や事業規模によって異なるため、自身の状況を確認し、適切な期間保存することが法令遵守の鍵となります。
電子帳簿保存法の主な対象書類4種類

電子帳簿保存法の対象となっている書類は、複数の種類があります。
1.国税に関する書類
その1つが国税に関係する書類です。この種類の書類に含まれているのは、国税の納税額を計算する時に必要となる書類などです。決算に関係する書類も、電子帳簿保存法の対象書類となっています。賃借対照表や損益計算書を電子データとして保存することができ、商品の販売をしている事業者は、棚卸票なども電子データで保存できます。
2.他者と取引する際の書類
取引に関係する書類も、国税に関係する書類として、この法律の対象になっています。この種類の書類は、事業者や法人が自分で作成した書類の控えと、取引相手から受け取った書類に大きく分類できます。取引相手が作成した書類の代表的なものは、領収書や請求書です。注文書や見積書も、取引関係の種類としてこの法律の対象になっています。発注書や送付書も、この法律の規定により、保存しなければいけない書類です。上記の種類に準ずるものも、この法律の対象になっています。なお、事業者が自分で作成した書類の控えとは、請求書や領収書の控えなどのことです。
3.帳簿の書類
国税に関係する各種の帳簿も、電子情報保存法の対象となっている書類です。売掛帳や買掛帳などの帳簿が、こうした書類に該当します。仕訳帳や総勘定元帳も、電子情報保存法の対象に含まれている書類です。現金出納帳を作成している事業者は、こうした書類も電子データとして保存できます。
4.電子取引を記録したデータ
電子情報保存法は、電子取引に関する取引情報も保存すべき対象としています。電子メールを使用した取引や、EDI取引などで作成された取引情報が、この法律の規定により保存する義務がある電子データです。注文書や領収書がこの形式で授受された場合にも、保存の対象となります。インターネット上に通販サイトを作り、こうしたサイトを通して商品の販売などを行った時にも、この取引に関係する取引情報は、電子情報保存法の対象になります。
電子帳簿保存法のスキャナ保存をする場合の要件

電子帳簿保存法の対象となっている書類のうち、国税に関係する書類は、スキャナを使用して保存することもできます。このような種類の書類をスキャナ保存をしたい場合には、一定の要件を満たすことが必要です。2022年の改正により、スキャナ保存をするための要件が一部変更されています。スキャナ保存をするためには、タイムスタンプを使用することが必要でしたが、使用できるタイムスタンプの要件も、2022年の改正により変更されています。
法律の改正前は、3営業日以内に付与されたタイムスタンプしか使用することができませんでしたが、2022年の改正により、最長の場合、2か月と7営業日以内に付与されたものも、使用できるようになりました。使用できるのは、一般財団法人日本データ通信協会が認定をしたタイムスタンプです。使用するスキャナの解像度にも要件があり、200dpi以上のものを使用する必要があります。重要な書類をスキャニングする場合には、24ビットカラーが使用できるスキャナを使用することも必要です。
バージョンを管理することも、スキャナ保存をするために必要となる要件です。書類の内容を訂正したり、一部を削除した時には、こうした事実や具体的な変更の内容を確認できるようにしておく必要があります。入力者の情報を記録しておくことも、スキャナ保存をするためには必要な要件です。入力を担当した人だけでなく、担当者を監督する権限を持っていた人間に関する情報も、記録しておくことが必要になります。
検索機能を使用できるようにすることも、スキャナ保存をするための重要な要件です。検索機能に関する規定は詳細に決められていましたが、2022年の改正により、検索機能に関する規定の一部が変更されています。検索要件として記録しなければいけない項目も変更されていて、取引をした年月日やその他の日付、ならびに取引先と取引金額のみが、必要な検索要件となりました。税務職員から要求された電磁的な記録のダウンロードに応じることができる時には、特定の検索機能を確保することも不要になっています。
電子帳簿保存法に対応するメリット
電子帳簿保存法(電帳法)に対応する最大のメリットは、経理業務の劇的な効率化です。紙の書類の印刷、整理、保管、ファイリングといった手間や、それに伴う人件費、郵送費、スペース代を削減できます。電子データとして一元管理することで、過去の書類を探す際も、検索機能を使って瞬時に必要な情報を見つけ出すことが可能となり、検索時間の短縮につながります。
次に、コンプライアンス(法令遵守)の強化が挙げられます。電帳法に則った形でデータを保存することで、税務調査などにもスムーズに対応できる体制が整い、保存義務違反のリスクを回避できます。さらに、電子保存はデータの改ざん防止措置を伴うため、証拠力が向上し、社内の内部統制強化にもつながります。
また、電子データでのやり取りや保存が主流となることで、テレワークやペーパーレス化を強力に推進できます。これは、働き方改革を後押しし、場所を選ばない柔軟な業務体制の構築に不可欠です。
電子帳簿保存法に対応するデメリット
電子帳簿保存法(電帳法)への対応で最大のデメリットは、初期のコストと手間がかかることです。電子データを適切に保存・管理するためには、専用の会計ソフトや文書管理システムなどの導入や、既存システムの改修が必要になる場合があります。とくに、中小企業や個人事業主にとっては、これらの初期費用やランニングコストが無視できない負担となり得ます。
次に、新しいルールの習得と運用体制の構築が挙げられます。電帳法には、タイムスタンプの付与や真実性・可視性を確保するための検索要件など、複雑なルールが定められています。これらの要件を正しく理解し、従業員への教育やマニュアル作成、運用フローの整備に時間と労力を割く必要があります。ルールを誤って運用すると、法令違反となるリスクも伴います。
また、電子データ保存に完全に移行することで、予期せぬシステム障害やデータ消失リスクにも備えなければなりません。定期的なバックアップやセキュリティ対策を強化する必要があり、ITリテラシーの低い事業者にとっては特に大きな課題となります。紙での保存という慣れた方法からの脱却は、一時的に業務の停滞や混乱を引き起こす可能性もあります。
公益法人におすすめの会計ソフト

電子帳簿保存法の規定に従って経理をするためには、使いやすい会計ソフトを使用する必要もあります。電子帳簿保存法に対応している会計ソフトならば、法律の規定に合った方法で、電子帳簿などを保存することが可能です。
これから電子帳簿保存法に対応した会計ソフトを導入したい公益法人におすすめできるのは、バランスマン会計システムです。この製品を開発したのは公益情報システム株式会社という企業で、公益法人を対象として作られたソフトです。
バランスマン会計システムが公益法人におすすめできるのは、公益法人の会計処理に必要となるさまざまな機能が搭載されているからです。収入支出伺書入力という機能が利用できることも、この製品の大きな特徴です。この機能を使用すれば、簿記に関する知識に詳しくない人であっても、必要な入力作業ができます。法律の改正によって変更された会計基準に対応できる機能も、この製品には搭載されています。過去の基準で作成しなければいけない報告書がある場合にも、過去の基準で簡単に報告書を作成できるソフトです。
さまざまな書類を対象にしている電子帳簿保存法
電子帳簿保存法が対象にしている書類は、種類が多いことが特徴です。国税に関係する書類もこの法律の対象になっていて、取引相手から受け取った領収書や請求書が保存の対象です。国税に関係する帳簿もこの法律の対象になっていて、電子取引のために発行された取引情報も、保存が必要になります。この法律に対応した会計ソフトを使えば、こうした書類の管理がしやすくなるのでおすすめです。
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