事業者にとって経理や税務への対応は規模の大小にかかわらず最新の法令に対応する必要があります。特に「電子帳簿保存法」は会社法による罰則規定があり、要件を満たす具体的な事務処理が必要となります。
そこで、国税庁が提供する最新版のガイドラインをもとに、タイムスタンプの付与方法について解説します。また、記事後半にはおすすめタイムスタンプの付与サービスや利用したい会計ソフト・システムについても紹介します。
国税庁が示す電子帳簿保存法のガイドライン
国税庁は「電子帳簿保存法」のガイドラインを国税庁ホームページや特設サイトに掲載し、企業の法人・個人事業主や一定規模の副業者に対してルールの周知を行っています。ガイドラインは、2018年に初版発行された後、2021年から毎年改定されており、2024年7月22日に発行された「電子取引 取引情報保存ガイドライン第3.2版」が最新版に該当します。
ガイドラインの内容は、「電子帳簿保存法の概要」と「電子取引の保存要件」、「電子取引の種類と保存のポイント」など全部で6章の文書です。そこでは具体的に、電子取引のデータを保存する際の要件やタイムスタンプの付与について説明しています。
タイムスタンプの必要な取引データにタイムスタンプが付与されていない場合、法令違反となり100万円以下の罰金を含む罰則を受けることもあります。ルールを守って電子取引データや帳簿を保存することが大切です。
電子帳簿保存法に適したタイムスタンプの付与方法
タイムスタンプを付与する方法は、会計ソフトやクラウドサービスで請求書などを読み取ってからタイムスタンプ機能で付与する方法があります。まず、請求書や領収書などの電子データを会計ソフトやシステムに取り込みます。データの形式は各システムの仕様に合わせる必要があり、PDFや画像形式など、対応するファイル形式で保存するのが基本です。
次に、タイムスタンプ付与機能を有効にします。設定を確認後、データ登録時に自動的にタイムスタンプが付与される機能があれば有効化し、ない場合は手動でタイムスタンプを付与します。
手動付与の場合は、読み込み時にデータを選択し、機能でタイムスタンプを付与します。タイムスタンプはその時点の時刻が記録される形です。スタンプ付与後は、データは法令の定める期間で保管します。
事業者が手軽にタイムスタンプを付与する方法は、画像データの読み込みだけで付与が可能な会計ソフトや管理システムを導入することです。国に認証を受けた会計ソフトが一般に普及しており、事業者が経理処理とあわせてシステムを採用しやすいでしょう。
国税庁が推奨するタイムスタンプサービス
国税庁は、時刻認証業務がタイムスタンプを付与する会計ソフトやシステムをおすすめのサービスとして挙げています。
それが「セイコータイムスタンプサービス」「MINDタイムスタンプサービス」「アマノタイムスタンプサービス3161」「認定タイムスタンプ byGMO」の4つです。上記のサービスで付与されたタイムスタンプは、市販のソフトでスタンプが付与されたことを確認することができます。
また、認定業者と連携することで、会計ソフトや帳簿システムにタイムスタンプサービスの機能を導入したものも同様のサービスです。そのため、上記4サービス以外にも民間の会計ソフトでタイムスタンプサービスを利用することができます。
信頼性の高い電子帳簿保存法対応タイムスタンプソフトの選び方
電子帳簿保存法対応のソフトを選ぶ際には、信頼性の高い認定事業者のタイムスタンプソフトか、国税庁のJIIMA認証で推奨されている「電子帳簿ソフト法的要件認証製品」のソフトを選ぶことです。それから公益法人事業者の場合は、公益法人のソフトを選ぶことも有効な手段です。以下に3つのおすすめソフトを紹介します。
セイコータイムスタンプサービス|セイコーソリューションズ株式会社
タイムスタンプソフトで知名度が高くおすすめなソフトが「Seiko Trust タイムスタンプ」です。認定事業者のため、タイムスタンプの要件を満たした付与が可能となります。電子帳簿保存法で対象となる電子取引データやスキャン保存の書類でもタイムスタンプを付与することができます。インターネット環境を利用したスピーディなスタンプ付与も魅力です。
また、電子データの真正性を保証できるソフトとしても優秀です。PDFの場合は、Adobe Acrobat Readerと組み合わせて使えます。さらに、帳簿の場合は、電子帳簿保存法に対応した「セイコー ストレージサービス」のクラウドサービスも提供されており、タイムスタンプの「真実性」に加えて、「可視化」の要件も満たしています。
参考:SeikoTrust「Seiko Trust タイムスタンプ」
弥生会計|弥生株式会社
弥生会計は、やよいの青色申告とあわせて「電子帳簿ソフト法的要件認証製品」に認定されている認証番号100700-01の会計ソフトです。クラウドサービスなど会計業務の効率化を図るソフトを提供しており、その中でセイコーのタイムスタンプサービスに連携して、会計業務と同時にタイムスタンプの付与ができます。
会計ソフトは全部で3種類あり、個人事業主向け、法人向け、企業社向けにわかれています。それぞれで電子帳簿保存法に対応したタイムスタンプのサービスを利用できるためおすすめのソフトです。
WEBバランスマン|公益情報システム株式会社
公益法人向けの会計ソフトを提供しているクラウド・オンプレミスを選べる会計システムです。電子保存や電子データの仕分けにも対応しています。また、年度ごとの会計基準を選択しての出力機能や会計処理が可能です。
オプションで提供する「ClimberCloud」では、JIIMA認証を受けた電子帳簿保存法に適したシステムとなります。そのため、伝票の登録作業や検索確認などが容易です。
国税庁のQ&Aから学ぶタイムスタンプの実務上の注意点
国税庁は、電子帳簿保存法に関する一問一答を提供しており、最新版では2024年の法令上のルールにあわせてよくある疑問に回答しています。その中で、学ぶタイムスタンプの実務上の注意点としては、タイムスタンプの付与期間や事務処理の規定などが挙げられます。
まずタイムスタンプの付与は期間が定められており、7日が基本となっています。ただし、業務の種類や形態によっては7日でスタンプがすぐに付与できない場合もあるため、一律の規定ではありません。
スタンプを付与できない状態が解消されて、その後にスタンプが付与されていれば「速やかに」スタンプが付与されたと判断されます。その場合、事務処理の規定を明確にしている必要があります。
国税庁が示す電子帳簿保存法対応のタイムスタンプについてまとめ
今回は、国税庁がガイドラインで説明するルールに沿った電子帳簿保存法対応のタイムスタンプについての解説です。事業者の利用を推奨している国税庁おすすめのタイムスタンプサービスがいくつかあります。
タイムスタンプのルールを把握した上で、この記事で紹介したさまざまなシステムや会計ソフトとあわせて検討しましょう。