公益法人を運営する中で、毎年の収支管理は避けて通れない重要な業務のひとつです。特に近年は制度の見直しが続き、会計基準や財務ルールに関する情報を常に最新の状態で把握しておく必要があります。なかでも、2025年4月に実施された「収支相償」の改正は、多くの公益法人に影響を与える大きな変更として注目されています。
今回の改正では、これまで求められていた単年度での収支均衡から、中期的な視点での収支管理へと考え方が大きく転換しました。この記事では、その背景や改正内容、実務に与える影響をわかりやすく解説し、今後の会計体制づくりに役立つ情報をまとめてお伝えします。
公益法人の「収支相償」とは?
「収支相償」とは、公益法人が実施する公益目的事業について、当該事業の収入が費用を上回ってはならない、という財務ルールでした。つまり、毎年度ごとに“事業収入 ≦ 事業費用”とすることが求められていたのです。ところが、2025年4月から施行される改正により、この「単年度収支均衡」は見直され、新たに「中期的収支均衡」という考え方へ移行します。
この変更は、単なる会計ルールの見直しに留まらず、公益法人の資金運用や事業計画の自由度を大きく左右する制度改革です。従来のように「毎年赤字かゼロでなければならない」という制約から脱し、中長期的な視点で財政の健全性を確保しながら事業を進めやすくすることを目的としています。
公益法人の収支相償の改正内容
2025年4月の改正では、以下のような変更点が含まれています。
中期的収支均衡への移行
従来の「収支相償原則(単年度ごとの収支均衡)」を改め、複数年度を通じた「中期的収支均衡」が認められるようになりました。具体的には、過去数年の収支状況を通算して黒字と赤字を相殺し、5年程度の期間で収支全体のバランスをとる考え方です。
これにより、特定の年度で黒字が出ても必ずしも即時費消する必要はなく、事業計画や将来投資に活用できる余地が広がります。
財源活用の柔軟化(「公益目的充実資金」などの制度導入)
改正にあわせて、新しい資金制度が導入されました。これまでの「特定費用準備資金」「資産取得資金」は統合・見直され、将来の公益目的事業の充実や資産取得に備える「公益目的充実資金」として整理されます。
これにより、剰余金(黒字)が出た場合でも、将来の公益目的事業や資産取得のための積立が認められるようになります。
遊休財産規制の見直し/「使途不特定財産」への名称変更
従来の「遊休財産」の考え方が改められ、「使途不特定財産」という名称・制度へ変わります。これにより、使途が定まっていない資金の保有や活用に関する制限が見直され、法人の資金活用の自由度が高まります。
長期的な制度整備および経過措置の設定
新制度は 2025年4月1日以降に開始する事業年度 から適用が始まります。とはいえ、すべての法人にいきなり義務化されるのではなく、最大3年間の経過措置が設けられており、この間は旧制度と新制度のどちらを使うか選択できます。
この猶予期間を利用して、会計システムの対応や内部体制の整備を進めることが可能です。
収支相償改正で変わること ― 会計・実務での影響
この制度改正によって、公益法人の会計処理や事業運営にはさまざまな変化が生じます。主なものを整理します。
年度単位の収支に縛られにくくなる
これまで、ある年度に黒字が出ると「すぐにその分を費消しなければならない」という制約がありました。改正後は黒字がそのまま将来の事業拡充や資産取得のための資金にできるようになり、年度間での資金の使い方に柔軟性が生まれます。たとえば、大きな設備投資や長期プロジェクトへの備えとしての積立などが現実的に可能になります。
会計処理の複雑化と管理の重要性が増す
ただし、単年度黒字をそのまま「自由に使ってよい」というわけではありません。将来の資金使途が「公益目的充実資金」などでしっかり区分管理され、かつその用途や運用計画を明確に説明できる必要があります。過年度からの赤字との通算管理や剰余金の処理についても、帳簿上・内部管理上の厳格さが求められます。
資金運用や事業計画の自由度が高まる
改正により、将来的な事業拡大や設備更新、長期プログラムへの投資がしやすくなるため、法人としての中長期的な戦略を立てやすくなります。特に、非営利ながら資金の余裕がある場合、その活用先を柔軟に検討できます。
会計システム・ソフトの見直しやアップデートが必要に
新しい制度に対応するには、これまでの会計ソフトや帳票フォーマットでは不十分になる可能性があります。特に、年度ごとの収支だけでなく、複数年を通じた収支の管理、基金の積立・取崩し管理、使途区分の明確化などに対応できるシステムが求められます。
公益法人の会計におすすめなソフト:WEBバランスマン会計
今回の制度改正に伴って、公益法人の会計処理はこれまで以上に複雑化し、かつ柔軟性と透明性が求められます。そこで特におすすめなのが、公益法人専用会計ソフト「WEBバランスマン会計」です。
このソフトは、収支相償原則から中期的収支均衡への移行に対応した帳票構成と機能を備えており、以下のような特徴があります。
- 公益目的事業・収益事業・法人会計の区分管理に対応
- 剰余金の積立(公益目的充実資金)および取崩しの管理を想定した機能
- 過年度赤字との通算計算や、複数年の収支管理に対応
- 財源区分別・用途区分別の管理が容易で、監督機関や支援者への説明資料も出力可能
- 新基準で求められる帳票様式や注記対応のアップデートが行われている
特に、今回のような大きな制度変更がある年には、専用ソフトでのシステム対応は“制度対応漏れ”や“帳票作成ミス”を防ぐ上で非常に有効です。
公益法人としての透明性と持続可能性を両立させるために、こうした専用ツールの導入を検討する価値は高いでしょう。
公益法人の収支相償改正についてまとめ
2025年4月から施行された改正により、公益法人を取り巻く財務規律は大きく見直されました。主なポイントは「単年度収支均衡」から「中期的収支均衡」への移行、資金の使途や積立の柔軟化、そして会計処理・管理の高度化です。
この改正は、単なる制度変更ではなく、公益法人がこれからの社会変化に柔軟に対応しながら、持続的な公益活動を行うための重要な転換点となります。一方で、旧来のような単年度中心の管理方式では対応が難しくなり、会計処理や財務管理の複雑性が増すのも事実です。
そのため、会計ソフトを含めた体制整備、帳票や内部ルールの見直し、将来の事業計画との整合性を踏まえた資金運用方針の策定など、早めの準備が不可欠です。
特に、公益法人専用ソフトの導入は改正の趣旨に合致した対応として有効であり、業務効率化とコンプライアンス遵守を同時に実現できます。
この機会に、ぜひ貴法人の会計体制を見直し、改正後の新しい公益法人制度に備えていただければと思います。
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