公益法人の会計は一般企業と似て非なる点が多く、特に「財産目録」の記載などは苦労するものです。
貸借対照表との違いやどの程度詳細に記載するかなど、難点にぶつかることも有るでしょう。
そこで、本記事では公益法人の財務目録の基本的な知識や法的根拠、項目別の書き方、記載例などを解説していきます。
公益法人の財産目録を適切に記載して処理を進めたい場合は、ぜひ参考にしてください。
公益法人の財産目録とは?

まずは、公益法人の財産目録について、基本的な内容を解説します。
財産目録の法的根拠
財産目録とは、事業年度末(決算日)時点で法人が保有するすべての資産・負債を、内訳と使途まで含めて一覧化した詳細なリストです。
形式こそ貸借対照表(B/S)と似ていますが、貸借対照表が財政状態を外部に「報告」する要約表であるのに対し、財産目録は行政庁に対して財産の内容や用途を「証明」する明細書です。
そして、作成と備置、提出は法令で義務付けられています。
公益社団・公益財団に関する「公益法人認定法」第22条は、毎事業年度末に財産目録を作成し、主たる事務所に備え置き、行政庁へ提出することを定めています。
なお、財産目録の目的は、公益目的に沿った適正な管理・運用を監督するためです。
財産目録は公益性と透明性を担保する要の書類であり、法人の信頼を支えるプロセスだと認識しましょう。
参考:e-GOV法令検索「公益社団法人及び公益財団法人の認定等に関する法律 第二十二条」
貸借対照表と財産目録の明確な違い
公益法人の財産目録と貸借対照表の違いをもう少し見ていきましょう。
両者には明確な違いがあります。
財産目録の目的は、貸借対照表における資産・負債の名称・数量・使用目的・価額を詳細に表示し、組織の透明性と説明責任を確保することです。
一方の貸借対照表は、期末時点の資産・負債・純資産を示して財政状態を明らかにする書類です。
財産目録は「中身は何で、何のために使っているか」を示す裏付け資料であり、貸借対照表は各勘定科目の総額を示す書類と位置付けられます。
具体的に見ていくと違いが明確になるでしょう。
貸借対照表では「器具備品 1,000,000円」のように勘定科目の総額を表示しますが、財産目録では「A事業用PC 5台 500,000円/管理用複合機 1台 500,000円」のように名称・数量・用途まで記載します(必要に応じて注記や附属明細書で補足します)。
つまり、同じ勘定科目でも「何に使っているどの資産か」を個別に明らかにするのが財産目録の役割です。
公益法人の財産目録に記載すべき内容や項目
公益法人の財産目録の構成は大きく「資産の部」「負債の部」に分けられます。
資産の部には現金預金、土地、建物、車両運搬具、器具備品などのプラスの財産を記載します。
負債の部には未払金・借入金・各種引当金などのマイナスの財産を示すのが特徴です。
また、財産目録の末尾には、資産額から負債額を差し引いた純資産額を記載します。
公益法人の財産目録に関する記載例
ここからは、よくある科目ごとに備考欄で何をどう書くべきか、実務のポイントを解説していきます。
財産目録の基本の構成は勘定科目・内容・金額・備考(使途・内訳)ですが、特に備考欄の具体性がポイントです。
資産の部の記載例
資産は「流動資産」「固定資産」に大別され、とくに固定資産は「基本財産」「公益目的保有財産」などの区分が判別できるように記載します。
「現金預金」の項目では、口座が複数ある場合、口座単位で記載します。
公益目的事業の専用口座があれば「(公益目的事業C 専用口座)」のように用途を明記し、資金の流れを可視化します。
「土地・建物」の記載は、金額が大きく公益事業の基盤となるため、詳細が必須です。
土地は所在地・面積に加え「基本財産。公益目的事業Aの施設敷地。」等を備考に記載しましょう。
建物が多用途なら「1階100㎡:管理部門事務所/2階80㎡:公益目的事業B研修室」のように、面積等の合理的基準で使用実態を示します。
ほかにも「車両運搬具・器具備品」では、共通利用の比率が要点です。
たとえば「公益目的事業A・B送迎用 70%/管理業務 30%」のように、使用時間や走行距離等の根拠に基づく按分割合を明示しましょう。
負債の部の記載例
負債も「流動」「固定」に区分し、どの活動に伴って発生したかを備考欄で明確にしていきます。
「短期・長期借入金」では、貸借対照表は合計値でも財産目録は借入先ごとに記載しましょう。
備考に「公益目的事業Aの運転資金」「公益目的事業Bの施設取得資金」など、資金使途を記載し、公益目的との紐づけを示します。
「未払金」においては、内容を具体的にしてください。
「公益目的事業Bの施設改修費 未払分」「管理部門 事務用品購入費 未払分」など、事業用か管理用かがわかる表現が望ましいでしょう。
賞与引当金などの「引当金」は、職員が複数事業に従事する場合、按分比率に基づく内訳を備考欄に記載します。
「公益事業部門 1,200,000円/管理部門 600,000円」のように、基準の妥当性の担保が必要です。
参考:内閣府NPOホームページ「賃借対照表、財産目録、勘定科目の論点について」P3
公益法人の財産目録を記載する際のポイント

公益法人の財産目録の記載例だけでは、適切に記入できないことも考えられます。
ここでは、公益法人の財産目録を記載する際のポイントを紹介します。
財産目録では公益目的保有財産の「使途」を必ず明記する
行政庁が最も重視するのは、法人の財産が認定された公益目的のために適正に管理・使用されているかという点です。
その判断材料が備考欄の「使途記載」となります。
貸借対照表の金額を転記するだけでは役割を果たさないため、少なくとも「どの事業で使用」「管理との共用有無」を具体的に書き込みましょう。
共通資産は使用時間や面積など合理的な尺度で按分し、割合と根拠を併記するのが必須です。
曖昧なままだと行政庁からの指導の対象となる可能性があります。
WEB上にはさまざまな公益法人の財産目録が公開されているので、それを記入例として参考にするのも良いでしょう。
財産目録の金額は貸借対照表に合わせる
財産目録の金額は貸借対照表の数値(帳簿価額)に合わせます。
土地は取得原価、建物・車両は減価償却後の期末簿価に合うように記載してください。
時価で書いてしまうと貸借対照表との整合性が崩れるため、注意が必要です。
寄贈美術品などは受贈時の公正な評価額で資産計上し、そのうえで必要に応じて取得経緯等を注記や備考で補足してください。
参考:公益法人information「公益法人会計基準の運用方針」P15
財産目録をExcelで運用する際は記載ミスや属人化に注意する
財産目録をExcelで作成するケースもありますが注意点を事前に把握しておきましょう。
主な注意点は、転記・計算ミスと属人化です。
財産目録を貸借対照表や固定資産台帳からの手作業転記はヒューマンエラーが起こりやすく「資産合計が1円合わない」といった事態が頻発します。
原因究明に時間を取り、決算の遅延にもつながるでしょう。
さらに「按分比率が担当者だけの記憶」「前任者の集計ロジックがブラックボックス」などの属人化は、担当者の異動や退職時の大きなリスクです。
手順と根拠を文書化し、ロジックを可視化する運用に改めましょう。
公益法人の財産目録を記載・管理するなら「WEBバランスマン」
WEBバランスマンは公益法人会計に特化した会計システムです。
クラウド版でも導入可能で、インターネット環境があれば利用できます。
伺書から伝票へデータを引き継ぎ、日常の仕訳を迷わず入力できます。
按分処理やワークフロー連携、電子保存(オプション)にも対応します。
さらに、最新の会計基準に対応し、16年・20年基準の決算書出力にも対応です。
SSLと権限設定で機密情報を守り、安心・安全に運用できます。
共通資産の事業別按分も一度の入力で反映でき、転記ミスも防げるでしょう。
掲示板やスケジュール共有も備え、チームの連携もよりスムーズです。
導入後もサポートを受けられるので、予期せぬトラブルなどに備えられるのも強みといえます。
公益法人の財産目録の記入や会計処理を効率的に進めたいときは、WEBバランスマンの導入を検討してみてください。
まとめ
今回は公益法人の財産目録の定義から項目別の記載のポイントなどを解説しました。
公益法人の財産目録を作成する際は、備考欄に具体性を持たせることがポイントです。
さらに、貸借対照表との違いを把握し、財産目録の作成時は両者の整合性を図ることも重要となります。
財産目録をExcelで運用すると、記載ミスや属人化などの問題も発生ます。
WEBバランスマンのように、財産目録の記載を正確かつ迅速に進められるソフトの導入も検討し、適切に処理していきましょう。
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