「利益は出していいの?どこまでが収益事業?」など、公益法人の利益について悩む方もいるのではないでしょうか。
本記事は、利益の種類と使い道などを解説します。
公益法人の利益について知識を習得したい場合は、ぜひ参考にしてください。
公益法人の利益とは

公益法人の利益とは、事業活動の収支から生じる余剰です。
株式会社の利益が株主への配当や企業価値向上の手段となるのに対し、公益法人では構成員への分配を認めず、公益目的への充当が前提となります。
したがって、利益は配分先よりも公益法人としての使命と整合性が求められます。
公益法人の利益の種類
公益法人の利益にはいくつかの種類があります。
ここでは、4つの種類をご紹介します。
収益事業による利益
法人が行う事業のうち、公益目的事業以外の事業を「収益事業」と呼びます。
これは、公益目的事業の財源を補うために行われるもので、具体的には会館の貸し出し、出版物の販売、不動産の賃貸などが該当します。
これらの事業から得られた利益は、法人の重要な自己財源となりますが、原則として、生じた利益は公益目的事業のために使用しなければなりません。
また、民間企業との競合にもなりうるため、収益事業から生じた所得に対しては法人税が課税されます。
公益目的事業の黒字
公益目的事業は、法人がその主たる目的として行う、不特定かつ多数のものの利益の増進に寄与する活動です。
この事業は利益の獲得を目的とはしませんが、事業年度末の決算において、収入が支出を上回り、結果として黒字(剰余金)が生じることがあります。
これは効率的な運営や想定以上の寄付金の収入などによって発生するもので、黒字分は翌年度以降の公益目的事業の貴重な財源として活用されます。
原則として、公益目的事業から生じる所得は非課税です。
財務活動による利益
財務活動による利益とは、公益法人が保有する基本財産や預金などを運用することによって得られる利益です。
具体的には、預金の受取利息や有価証券の配当金、利子などがこれにあたります。
将来にわたる安定した法人運営の基盤を築くため、堅実な資産運用によって得られるこれらの利益も法人の財産を構成する重要な要素となります。
固定資産売却など臨時損益
臨時損益とは、通常の事業活動とは別に臨時的に発生する利益や損失です。
具体的には、法人が所有している土地や建物を売却した際に生じる売却益や長期間保有していた有価証券の売却益などが該当します。
これらの損益は毎年度、経常的に発生するものではなく、法人の財政状態に一時的に大きな影響を与える可能性があります。
公益法人の利益の使い道

公益法人の利益は、株式会社などの通常法人と異なり、使い道にルールがあります。
ここでは、具体的な使い道について解説していきます。
公益目的事業に優先的に活用する
公益法人の利益の使い道として、最も重要かつ優先されるのが公益目的事業への充当です。
特に法人税が課される収益事業から生じた利益は、その一部(50%)を公益目的事業の財源に充てることが法律で義務付けられています。
これは法人が公益性を認められ、税制上の優遇措置を受けていることの根幹をなすルールです。
具体的には、公益目的事業の規模を拡大したり、より質の高いサービスを提供したり、あるいは利用料を引き下げて受益者の範囲を広げたりするなど、社会への貢献をさらに大きくするために活用されます。
人材育成やDXに活用する
公益目的事業の質を維持、向上させるためには、それを支える「人」と「仕組み」への投資が不可欠です。
職員の専門知識やスキルを高めるための研修参加費用や資格取得支援といった人材育成への支出は、巡り巡って受益者へのサービス向上につながります。
同様にデジタル技術を活用して業務プロセスを効率化するDX(デジタルトランスフォーメーション)への投資も重要です。
たとえば、会計システムや会員管理システムを導入することで、管理業務の負担を軽減し、より多くのリソースを本来の公益活動に振り向けることが可能になります。
将来的な経営リスクに備えて内部留保する
公益法人も安定した組織運営を続けるためには、将来の予測不能なリスクに備える必要があります。
そこで、利益の一部をすぐに使わずに法人内に留保(内部留保)し、経営の安定化を図ります。
ただし、公益法人は利益を過度に溜め込むのではなく、公益のために最大限活用することが求められるため、無計画な内部留保は認められません。
そのため、将来の特定の目的(数年後に開催する大規模なイベント、予期せぬ災害からの復旧費用など)のために資金を積み立てる「特定費用準備資金」といった制度を活用し、計画的に将来に備えることが一般的です。
施設や設備などに投資する
公益活動を継続的に行っていくうえで、活動の拠点となる施設や必要な設備の維持や更新は必要になります。
建物の老朽化に伴う大規模修繕や、より性能の高い機材への買い替えなど、将来必要となるまとまった支出に備えるため、利益の一部を計画的に積み立てることが認められています。
これは「資産取得資金」と呼ばれます。
将来の設備投資のために計画的に資金を確保しておくことで、いざという時に財政が圧迫されることなく、安定して事業を継続できる基盤を整えることにつながります。
公益法人の利益でよくある質問
公益法人の利益や会計について、さまざまな疑問がでてくるものです。
ここからは、公益法人の利益でよくある質問に回答していきます。
公益法人でも利益を出して大丈夫?分配はできる?
結論からいうと、公益法人が事業活動の結果として利益(剰余金)を出すこと自体は全く問題ありません。
むしろ、安定的な法人運営のためには利益の確保も重要です。
ただし、得られた利益は、あくまで法人の公益目的を達成するために再投資される必要があります。
どこからが収益事業?公益目的事業との線引きは?
この線引きは、法人税の課税対象となるかを判断するうえで非常に重要です。
「公益目的事業」は不特定多数の利益に貢献する事業で、原則非課税です。
一方「収益事業」はそれ以外の事業を指し、法人税法で定められた34の事業に該当し、継続して行われる場合に課税対象となります。
収益事業に該当するかどうかは、個別の事業内容に応じて実態に即して判断されます。
みなし寄附金は使える?上限と手続きは?
みなし寄付金も使えます。
みなし寄附金とは、収益事業で得た利益を公益目的事業のために支出した際に、その支出額を「寄付金」とみなして、収益事業の経費(損金)として計上できる制度です。
その結果、課税所得が減り、法人税の負担を軽減できます。
損金にできる上限額は、原則としてその事業年度の所得金額の50%です。
適用を受けるには、確定申告の際に所定の明細書を添付する必要があります。
役員報酬や職員賞与に利益を充ててもよい?
役員報酬や職員の給与・賞与は、事業を行うための「経費(人件費)」であり、利益の「分配」とは異なります。
したがって、事業の対価として支払うこと自体は問題ありません。
ただし、その金額は社会通念上、不当に高額であってはならず、同規模・同業種の他法人の水準などを参考にした適切な範囲内である必要があります。
消費税やインボイスはどう関係する?
公益法人も対価を得て行うサービスの提供(セミナー参加費、物品販売料など)など、課税対象となる取引を行えば消費税の納税義務者となります。
寄付金や会費の多くは原則として課税対象外です。
インボイス制度については、課税事業者であれば適格請求書発行事業者への登録が必要です。
取引先との関係上、免税事業者であっても登録を検討するケースが増えています。
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会計業務の負担を軽減し、本来の公益活動に専念したい場合は、導入を検討してみてください。
まとめ
公益法人の利益は株式会社とは異なり、分配が禁じられ、公益目的事業へ活用することが前提です。
活動の財源となる利益を、人材育成や設備投資、将来のリスクへの備えとして計画的に活用していくことが、法人の持続的な運営に不可欠です。
複雑な会計管理は、専用の会計ソフトを導入することで負担を軽減できます。
WEBバランスマンのような公益法人に特化した会計システムを導入して、利益や日々の会計処理を進めてみてはいかがでしょうか。
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