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【2025】決算書の電子化方法とは?具体的ステップや注意点を解説!


2025.11.30

近年、決算書の電子化(デジタル化)は、企業の経理効率化や法令対応の観点から非常に注目を集めています。とはいえ、制度要件や実務手順が絡むため、「何から始めればよいか分からない」という声も少なくありません。
この記事では、「決算書 電子化」をテーマに、定義・目的・手順・注意点・まとめの流れで詳しく解説します。制度に則った実践のヒントもお伝えしますので、これから電子化を検討する方にとって実務的なガイドとなれば幸いです。

決算書の電子化とは?

まず、決算書の電子化とは何を指すのか、法制度と実務の両面から整理します。

会計や税務の文脈では、「電子帳簿保存法(電帳法)」という法律の枠組みが大きく関わります。国税関係帳簿書類や決算関係書類を、所定の要件を満たして電子データで備付け・保存できる制度が定められています。

たとえば、会計ソフトで作成した貸借対照表・損益計算書・決算概要などを、紙に出力して保管するのではなく、そのまま電子データで保存し、必要に応じて画面出力・印刷可能な状態を保持することが「決算書の電子化」に当たります。実務上は、電子帳簿保存法の「電子帳簿等保存制度」の範囲に含まれます。

ただし、注意点として、電子帳簿保存法の義務範囲には区分があります。すべての決算書が義務化されているわけではなく、取引として電子取引された請求書・領収書の電子データ保存が義務化されている部分があります。

また、決算書を電子化したい場合には、電子帳簿保存法の要件を満たすシステムや運用体制を整えることが前提となります。

決算書の電子化の主な目的

決算書の電子化を進める目的は複数あります。これら目的を明確にすることで、導入の設計や運用戦略がぶれにくくなります。

業務効率化・ペーパーレス化

紙ベースでの印刷・保管・検索・共有などには手間とコストがかかります。決算書を電子化することで、出力・保管スペース・郵送・写し配布といった負荷が軽減されます。また、データ検索や閲覧性も向上します。

データ整合性と流用性の向上

電子データとして保存することで、他システム(分析ツールやERP/BI系システム)への取り込みや再利用が容易になります。異なるデータソースとの統合や再集計、可視化も柔軟になります。

法令対応とリスク低減

電子帳簿保存法の要件を満たす運用にすることで、法令上の保存義務を適切に果たすことができます。また、紙の劣化、災害や紛失リスク、改ざんリスクを低く抑えることもできます。

監査・統制強化、説明責任の向上

電子化された決算書を適切なアクセスログや変更履歴管理付きで保存すれば、監査対応や内部統制、説明責任が強化されます。後日証跡を追える体制構築にも役立ちます。

将来対応性・DX推進との親和性

経理・会計部門のデジタル変革(DX)と整合させることで、将来的な会計制度変化やデータ活用の拡張性を確保できます。特に、他の会計システム・税務システムと連携する上での基盤にもなります。

【状況別】電子データ決算書の対応方法

【状況別】電子データ決算書の対応方法

電子データ決算書は、紙書類やインボイス制度に関連する書類がある場合には、それぞれ適した対応が必要になります。具体的にどのような対応をすべきか、解説します。

電子データと紙書類の両方がある場合

電子データと紙書類が混在する場合、管理の観点からすべての決算関係書類(貸借対照表、損益計算書など)を電子データ化・紙書類のどちらかに統一すると良いでしょう。

まず、パソコンで作成した決算書は、そのまま電子帳簿保存法の「国税関係帳簿書類の電磁的記録による保存」の区分で電子データとして保存できます。もし紙で作成された資料がある場合は、スキャナーやスマートフォンで適切な要件(解像度・カラー・タイムスタンプ付与など)を満たしてスキャンし、スキャナ保存として電子化します。

ただし、紙書類で保存する場合は印刷漏れ・書類重複などの人的ミスや手間もあり、今後、法令改正や税務調査時のリスク管理、業務効率化を考えても、早期に電子化システム導入を進めることをおすすめします。

インボイス制度に関連する書類がある場合

電子帳簿保存法とインボイス制度は、企業の経理業務における電子化を進めるための重要な制度です。とくに、決算書の電子化では、電子帳簿保存法に基づき、貸借対照表・損益計算書などの決算関係書類を紙ではなく電子データで保存することが認められています。会計ソフトやクラウド会計システムを活用すれば、仕訳帳や元帳とともに決算書を自動的に電子保存でき、検索機能やタイムスタンプによって改ざん防止や税務調査時の対応もスムーズになります。

また、インボイス制度では、適格請求書を発行・受領するため、取引データを電子で管理するケースが増加しています。これらの請求書データや帳簿情報も電子帳簿保存法の「電子取引」に該当し、PDFなどのデータ形式で一定条件(検索機能保持、改ざん防止措置等)を満たして保存することが義務です。結果として、電子帳簿保存法対応のシステムを導入することで、インボイス対応から決算書の保存まで一元管理が可能となり、ペーパーレス化・業務効率化・コンプライアンス向上を同時に実現できます。

決算書の電子化のやり方・手順

決算書の電子化のやり方・手順

電子化を実現するためには、制度要件をクリアしつつ段階的に導入を進めることが成功の鍵です。以下は一般的な導入手順と実務フローです。

ステップ1:現状分析と導入方針設定

最初に、現在の決算書作成フロー(出力 → 印刷 → 承認 → 配布 → 保管)を把握しましょう。どの段階・帳票で紙が使われているか、誰が関与しているかを明確にすることが前提です。

そのうえで、電子化範囲(全部か一部か)、対象帳票、運用体制、システム選定基準などを決めます。方針を定めないまま導入を始めると運用ルールが曖昧になりやすいです。

ステップ2:要件設計とシステム選定

電子帳簿保存法の要件を理解し、それを満たせるシステム設計を行います。要件には、訂正・削除履歴の保存、検索性、タイムスタンプ、相互関連性、出力可能性、システム運用マニュアル整備などがあります。

次に、複数の会計ソフト・ERP・クラウド会計サービスを比較し、要件を満たすものを選定します。システム間連携性・拡張性・運用コスト・サポート体制も重視しましょう。

ステップ3:運用ルール整備とマニュアル策定

電子化された決算書を扱う運用ルールを明文化します。誰が承認できるか、変更履歴管理、アクセス権限、バックアップ、災害対策などを含めるべきです。

また、操作マニュアル、システム仕様書、業務フロー文書などを整備し、関係者(経理部門、上席、監査対応者など)に展開して理解を得ておきます。

ステップ4:試験運用と検証

まずは少部門または特定の帳票で試験的に運用してみます。実際に電子化した決算書が正しく出力・閲覧できるか、検索やログ記録が動作するか、法令要件を満たすかを検証します。問題があれば修正を加えます。

ステップ5:本番運用化と周知

試験運用が安定したら、本番化に切り替えます。移行期には紙と電子の併用になることもありますが、最終的には電子化運用に切り替えましょう。関係者に対して運用方法の周知・教育を行います。

ステップ6:運用モニタリングと改善

電子化後も定期的に運用状況をモニタリングし、運用トラブル・性能不具合・ログ管理状況などを点検します。法制度改正やシステム更新にも柔軟に対応できる改善サイクルを設けましょう。

決算書の電子化の注意点やコツ

電子化を成功させるためには、単にシステムを導入すればよいわけではありません。以下の注意点や実践的なコツを押さえておくことが重要です。

電子帳簿保存法の要件は厳格

電子帳簿保存法では、訂正・削除の有無を確認できる履歴、検索機能、相互関連性、出力可能性、タイムスタンプなど、複数の要件を満たす必要があります。これら要件を満たさない運用では、法的に認められない可能性があります。

決算書自体の保存義務は限定的

税法上は、決算書そのものの電子データ保存は義務ではないとする見解もあります。たとえば、電子帳簿保存法において義務とされるのは「電子取引データの保存」がメインであり、帳簿や決算書の保存は要件を満たせば認められる制度という位置づけです。

そのため、決算書を電子化するかどうかは、法人内部の方針や運用要件に基づいて決める部分もあります。

移行期の二重保存と混在対応

電子化への移行期には、紙と電子の併用対応が発生しやすくなります。ただし、途中で方式を変えると履歴整合性が崩れやすいため、切り替え時期・手順を慎重に設計しておきましょう。

システム障害/バックアップ体制の確保

電子システムの障害やデータ破損に備え、バックアップや冗長性を確保することが不可欠です。定期バックアップ、オフサイト保存、災害対応計画などをあらかじめ整えておくべきです。

アクセス管理・権限設定の厳格化

決算書という重要文書を扱うため、アクセス権限管理を厳格にする必要があります。各ユーザーの操作履歴ログを取る、承認プロセスを設けるなど、不正操作防止の工夫が求められます。

変更履歴と証跡管理

操作担当者が変更や修正を加えた場合でも、その記録が残るように運用することが重要です。いつ誰がどのような変更をしたかを追える証跡がないと、監査や説明責任上のリスクになります。

法制度改正対応とアップデート準備

電子帳簿保存法は改正が進んでおり、2024年以降に改正・義務化範囲の拡大などが実施されています。たとえば、2024年1月からは電子取引データの保存が義務化され、紙保存の取扱いが変わります。

そのため、将来の法改正対応を視野に入れたシステム選定や運用設計が肝心です。

利用者教育と運用定着の仕組みづくり

いくら優れたシステムを導入しても、使いこなされなければ意味がありません。関係者に対する研修、QA体制、運用マニュアルの見直し、定期フォローなどを通じて定着を図る努力が不可欠です。

決算書の電子化についてまとめ

決算書の電子化は、経理効率化やデータ利活用、法令対応を実現する大きな一歩です。以下のポイントを押さえながら、着実に導入を進めていきましょう。

  • 決算書の電子化とは、会計ソフト等で作成した決算文書を電子データとして保存・管理する仕組み
  • 電子化の目的は、業務効率化、保存リスク低減、データ活用性向上、監査対応など多岐にわたる
  • 導入手順は、現状分析 → システム選定 → ルール設計→試験運用→本番運用→モニタリング
  • 注意点として、電子帳簿保存法要件、アクセス管理、バックアップ、変更履歴、法改正対応、教育定着などがある

制度や技術の整備を丁寧に進めることで、決算書の電子化は確かな価値を持つストラテジーになり得ます。

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