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電子データ保存法とは?初心者でも分かりやすく法律について解説


2025.10.10

企業で書類を管理したり、支払いを管理したりしていると必ず当たるのが「電子データの管理」についてです。

今回はその電子データ管理の法律となる「電子データ保存法」について解説していきます。

電子データ保存法とは?

企業経営や会計業務を行っていると、必ず直面するのが「帳簿や書類の保存」に関するルールです。これまで日本では紙媒体による保存が基本でしたが、デジタル化の流れに伴い、電子的に保存することを認めた法律が整備されています。その中心となるのが「電子データ保存法」と呼ばれる制度です。

正式名称は「電子帳簿保存法」で、国税庁が定める税法関連のルールに基づき、帳簿や書類を電子データで保存する際の条件を規定しています。1998年に制定された当初は一部の大企業を対象にしたものでしたが、クラウドサービスや会計ソフトの普及により、中小企業や個人事業主でも広く利用されるようになりました。

電子データ保存法が生まれた経緯

この法律の趣旨は、紙による煩雑な保管から解放し、業務の効率化やデジタル化を推進することにあります。しかし、電子的に保存する場合は改ざん防止や検索性の確保など、いくつかの条件を満たす必要があります。たとえば、保存したデータのタイムスタンプ付与や訂正・削除の履歴管理、検索機能の確保といった要件です。

2022年以降は法改正が進み、電子取引データ(請求書や領収書など)については電子的に保存することが原則義務化されました。猶予措置も段階的に終了しているため、企業や事業者は必ずこの法律に対応しなければならない状況になっています。

このように、電子データ保存法は単なる効率化のための制度ではなく、税務調査や法的根拠に直結する重要な仕組みなのです。

電子データ保存法に対応しないと起こること

電子データ保存法に対応しない場合、単に業務効率が下がるだけでなく、法的に不利益を受ける可能性があります。特に国税庁が公開している情報に基づくと、対応を怠った場合の影響は大きく分けて次のようになります。

まず、税務調査におけるリスクです。電子取引データの保存が義務化されているにもかかわらず、紙に印刷して保存しただけでは法律に違反する扱いとなります。その場合、税務調査で「帳簿書類の不備」と判断され、青色申告の承認取り消しや重加算税の対象となる可能性があります。国税庁の解説でも、適切に電子保存していない場合は帳簿として認められないことが明記されています。

次に、経理業務全体への影響です。電子保存を前提とした仕組みに切り替わっているため、対応していないと会計ソフトや取引先とのやり取りで支障が出ることがあります。特にインボイス制度との関係もあり、適切にデータを保存できていないと仕入税額控除がスムーズに行えないなど、間接的な不利益につながるケースも考えられます。

さらに、猶予期間終了後の法的義務が明確になっています。2024年1月以降は電子取引のデータ保存が完全義務化され、正しく対応しない場合は国税庁からの指導や罰則のリスクが現実化します。紙で保存していた時代と違い、もはや「対応しなくても問題ない」という状況ではなくなっているのです。

このように、電子データ保存法に対応しないことで、税務調査での不利益、申告内容の否認、青色申告の取消といった深刻な影響が発生する可能性があります。したがって、事業者は必ず制度に対応した形で保存体制を整えておく必要があるのです。

電子データ保存法に対応する方法3選

電子データ保存法に対応するためには、単にデータをパソコンに保存するだけでは不十分です。国税庁が定める要件を満たし、改ざん防止や検索性を確保する仕組みを導入する必要があります。ここでは代表的な3つの方法を紹介します。

1.タイムスタンプを付与して保存する

もっとも一般的な対応方法は、電子取引データにタイムスタンプを付与することです。タイムスタンプとは、データが特定の時点から変更されていないことを証明する技術です。請求書や領収書などを受領した際にタイムスタンプを付与することで、改ざんされていない証拠を残すことができます。

2.訂正・削除の履歴を残せるシステムを利用する

国税庁の要件では、電子データを訂正や削除した場合、その履歴を確認できる状態にしておく必要があります。そのため、単なるPDF保存やフォルダ管理では不十分です。履歴管理機能を備えた専用のシステムやクラウドサービスを導入することで、誤入力や修正を行った場合でも透明性を確保できます。特に税務調査時には「修正前後の記録を確認できるか」が重要視されます。

3.検索機能を備えた環境を整える

保存したデータは、日付や金額、取引先などの条件で検索できる必要があります。これは、税務調査の際にスムーズにデータを提示するための要件です。クラウド会計ソフトや電子帳簿保存に対応したシステムでは、標準的に検索機能が備わっています。自社で保存方法を構築する場合は、必ず検索性を確保できるように仕組みを整えることが求められます。

電子データ保存法で注意すること

電子データ保存法に対応する際には、単にシステムを導入すればよいというわけではありません。法律の要件を正しく理解し、日常業務の中で適切に運用することが求められます。いくつか重要な注意点を確認しておきましょう。

まず、紙保存との違いを明確に意識することです。以前は請求書や領収書を印刷して保存しても認められていましたが、2024年以降は電子取引のデータを電子のまま保存することが義務となっています。したがって「紙に印刷すれば問題ない」という従来の考え方は通用しなくなっています。

次に、社内体制の整備が不可欠です。システムを導入しても、担当者が保存手順を守らなければ法令違反となる可能性があります。たとえば、受け取った電子データに速やかにタイムスタンプを付与するルールを設ける、修正や削除を行った場合は必ず履歴が残る環境で作業する、といった運用ルールを明文化しておくことが必要です。

また、保存期間を遵守することも重要です。電子データは帳簿書類と同様に原則7年間(法人の場合は最長10年間)保存する義務があります。この期間中、システム変更やクラウドサービスの乗り換えを行う場合でも、データが欠損しないよう引き継ぐ準備が求められます。

さらに、セキュリティ対策にも注意が必要です。クラウド保存を利用する場合は、信頼性の高いサービスを選ぶとともに、二段階認証や権限管理を設定して、外部からの不正アクセスを防ぐ体制を構築することが欠かせません。

これらの注意点を踏まえ、システム導入と運用ルールの整備を同時に行うことで、電子データ保存法に確実に対応することができます。

電子データ保存法についてまとめ

電子データ保存法は、請求書や領収書などの取引情報を電子的にやり取りする機会が増える中で、正確かつ効率的に保存・管理することを目的とした制度です。従来のように紙へ印刷して保存する方法は認められず、電子取引は電子のまま保管しなければならない点が大きな特徴です。

もし対応を怠れば、税務調査の際に「保存義務違反」と判断され、最悪の場合は青色申告の承認取り消しや追徴課税といった不利益につながるリスクもあります。そのため、単なるシステム導入ではなく、社内ルールや運用体制の整備が不可欠です。

今後、電子化はさらに進むと考えられるため、早い段階から電子データ保存法に対応しておくことが企業にとって大きなメリットとなるでしょう。これを機に、社内の保存体制や会計業務の流れを見直し、より効率的かつ安全な仕組みづくりを進めることをおすすめします。